第21話 罰ゲーム 後編
昼食を終えた俺達は、再び行きたくもない男物のコーナーに来ていた。
別に欲しくもないと言っているのにもかかわらず何故か片っ端から回らせられている。
もう既に買い物を再開してから3時間が経過した。どれだけ続くのか不安になってくる。
『あ、これとか似合いそう!このTシャツ可愛くない?どうどう?』
「ファションセンスとか皆無だし。中学まで部活に集中してたからそういうの気にする暇なかったし。そんな俺に聞いても無駄なのでは?」
『自分の服でしょ〜もっとさ、積極的に行こうよ。もっと「あれ欲しい」とか「これ似合いそう」とかないの?もっと自分を出していこ!』
「断言できる。ない。仮に自分を表に出すとするなら、「そんなことしている暇があったら帰ろう」だと思うが?それでもいいのか?」
『だ〜め〜』
「だろ?付き合ってやっている時点でありがたく思え。」
『ゆう君はつれないな〜』
「当たり前だ。」
『そんなことばっか言ってるとモテないよ〜』
「べ、別にモテなくていいし…」
『ほうほう、先輩はモテたいと…やっぱお洒落しましょうよ。そのウザったい髪とかも切れば少しはマシになると思うし…ね?』
「何でまた、急に先輩呼びなんだよ…そのほうがいいけどさ。あと髪に関しては余計なお世話だ。」
『でもモテたいんでしょ?』
「…ああ、モテたいさ、モテるもんならな。でもな良く考えてみろ。学校での評価は地に落ちていて、その上変な噂が絶えない。そんな男を好きになる要素なんて1ミリもなくないか?つまりいくら努力してももうモテようがないんだよ!」
『そんなことばっか言ってると本当にモテないぞ〜』
「もう諦めてるから別にいいんだよ…」
『あっそ。でも大体男物も見て回ったからいっか。ねぇ次は化粧品とか小物とか見に行っていい?』
「お好きにどうぞ。」
『ありがとね〜。まずは化粧品から。レッツゴー!』
化粧品つまりコスメ。
何がいいのか、どういいのかがさっぱりわからない。
どうとか聞かれてもはっきり言って違いがわからない。
軽く上から化粧したのかもしれないが、俺には少しも変わっていないように見える。
結局、舞山の機嫌が少し悪くなった。不可抗力である。
ちなみに俺は日焼け止めだけ買った。
体育大会とか日焼けで皮むけるな〜って思ったからである。
小物。そういえばハンディファンとか買ってなかったな。
去年周りが使っていて欲しいなって思ってたけど、部活に熱心になりすぎて買いに行く暇がなかったのだ。
流石に6月には売ってな…売ってるな。
しかもちょっと安い。持ちやすい方にしよう。
『ゆう君?なんか欲しいものでもあった?』
「携帯の扇風機欲しいなって思ってたから選んでるところ。」
『へー。あ、このファンかわいいじゃん。こっちにしなよ。』
「嫌だ。どう見ても女物じゃんか。どういう気持ちで学校で使うんだよ。恥ずいわ!」
『え〜。じゃあこっちとか?安いしそれなりに風強いって評判だよ。』
「じゃあそれにする。ありがとな。」
『えへへ〜どういたしまして』
______________
「これで買い物は終わりか?」
『買い出しあったでしょ?忘れないでよ〜』
「あ、そういえばそうだったな。てかわざわざ友達と遊びに行く日に買い出しとかって普通させるか?そこは気を使ってさせないのが定石ってやつなのでは?」
『うちさ、両親が共働きでいつも家にいないから。私が自分で家事してるの。買い出しもその一環だよ。』
共働きか。
あまり両親と過ごす時間が多くなかったのか。
それともとっくの前に諦めているのか。
舞山は感情が読み取れないほどに複雑な顔をしていた。
そんな顔を横目で見ていると自然とかわいそうと思えてくる。
まだ本当に可哀想な状況にあるのかどうかはわからないのにそう思えてならない。
「そっか…大変だな」
『同情しなくていいよ。さ早くいこ。』
「おっけ」
ここは深く追及しないでおこう。
そのほうが両者のためであろう。
______________
『今日はたのしかったね〜』
「ああ、そうだな。楽しかった。」
『え、いつになく素直…』
「そんな驚くことか?まあ洋服とかは結構疲れたがそれでもそれなりだったぞ。荷物がちょっとばかし重かったけどな。相変わらず買い過ぎだよ、お前。でも俺を着せ替え人形にしているときはいつもとは別の意味で恐怖だったな。」
『そこまで言わなくても良くない?…でもそっか楽しめたんならよかった〜 また今度行こうね?』
「機会があればな。」
『言ったね?約束だよ。』
「ああ、約束だ。」
「それじゃあ舞山、明後日また学校で。」
『重たっ。うんまたね〜 …あー買いすぎちゃったかな…』
どうしてだろうか。
別れ際の舞山の笑う顔はいつもよりも自然に見えた気がした。
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