第20話 罰ゲーム 中編
どうしよ、本当に助けてほしい。
現状、この場には俺と舞山、桐山がいる。
ここに藤室でもいてくれたら話がうまく収まりそうだが、藤室は今日は練習試合らしいのでここにはいないことは確実である。
つまり、ここには救いはないのだ。
本当に酷だと思う。
「言い訳は聞かないぞーあん?」
『まあまあ、そのくらいしとこうよ。ゆう君すーごく困ってる。』
「いいことじゃないか。爆発すべき奴が困ってるんだ。最高に笑える。」
「酷すぎるんだけど。そもそも俺らはお前が思っているような関係じゃないからな。」
『……そう本当に私たちそんなんじゃないから。テストで教科絞って勝負して私が勝ったからこうやって荷物持ちにしてるの。』
(いや違うだろ。お前が俺をはめたのちゃんと覚えてるからな。)
「あ~そんな感じだ。わかってくれたか?」
「いや~お前の口から聞かない限りは俺は納得しないからな!」
「しつこいぞ。それに舞山が言った通りというか少し違うが。テストの勝負で勝ったのにはめられて来る羽目になったってだけで特になんてこともないけど。」
「ハイハイ言い訳にしか聞こえないな。」
「おい、マジでしつこいぞ。」
『私を無視しないでくれると嬉しいんだけどな~』
「本当にお前がいるとややこしくなるな」
『それにしてもさっき桐山君に何話していたのかな?ね?ゆう君。』
「なんかはめられたって言ってたな。」
「おい。それは言うなって…」
『ゆう君?』
「はい、わたくしが勝負に負けたからでございます…。」
(こんなの半ば強制じゃないか)
「お前…なんか大変だな。」
「大変にした本人がそれを言うな。」
「すまんすまん。あ、俺妹待ってるから行もう行くわ。じゃあな。」
「ちょっ、おい逃げるな。ズルいぞ。」
「はて?何のことでしょう。」
「お前マジで月曜覚悟しておけよ。」
「お前なにするつもりだ。」
「お前がシスコンなの言いふらすからな。」
「やめてくれ…「お兄ちゃん、その人たちだれ?もしかしてお友達?」
「おい、人聞きの悪いこと言うなよ。普通に失礼だと思わんのかお前は。」
「はぁ。バカな兄が失礼しました。ほら行くよお兄ちゃん。」
「え?でもまだ話が終わってな…」
「問答無用。」
『あはは。なんか大変そうだね。』
「あれは確実に尻に敷かれてるな。でも俺とお前の関係も似たようなものじゃないか?後輩のお前が先輩の俺を尻に敷く。ほぼ似たようなものじゃないか。」
『…手が良い?それとも足が良い?』
「シンプルに手を出そうとしてくるのやめてもらえませんかね… ぐふっ。聞…た上で両方やってくるやつがいるか。」
『ごめんね~』
「…絶対に思ってないだろ」
『ほら、早く行かないと人いっぱいになっちゃうよ。早く行こ!』
「ごまかし方下手だろ。ったくラーメンはあっちか俺先頼んでくるわ。席の確保宜しく〜」
『任せといて!バッチリいい席用意しとくから!』
(フードコートにいい席もクソもないと思うのだが…まあいっか)
俺は新しく出来たラーメン屋ではなく、前からできた方に並ぶ。
わざわざフードコートの一番端まで行くのは面倒だった。
しかしさっきの場所の一番近くにあったラーメン屋は昨日入ったばかりらしいので、どうにも選べなかった。
どうにも単純に外してしまうのが怖いらしい。
あまりこういう事言うのは良くないが以前ノリで入った店の料理がクソまずかったことがあってそれ以降、挑戦する勇気が出ない。
誰かに誘われたらできるかもしれないが、一人だとその気力もない。
今日は一応女子遊びに来ている?という設定なので、いつも食べている豚骨はやめておこう。匂いが少ない塩ラーメンのほうが今はちょうど良いのかもしれない。
「塩ラーメン大一つ」
やはり大じゃないともの足りない。並だと食べた気がしないのだ。
「呼び出し札です。ランプが光ったら取りに来てください。」
そんなこと言われなくてもわかってる。初めて来た人のためにそう言っているに違いない。でも少しイラッとした。一連の出来事に相当なストレスが溜まっているのだろう。
「舞山、頼んできたぞ…ってもう頼んだのかよはえーな。」
『遅かったからね。近くのラーメン人少なめだったからすぐに頼めたよ〜普通に美味しいし当たりだね。』
「でお前さ、何で桐山隣りにいるの?わざわざここじゃなくても良かっただろ。」
『なんとなく?そこにいたからとりあえず〜って感じで座っただけだよ?』
「わざわざトラブル起こしそうなやつの近くに座るなよ。さっき散々な目にあったばかりだろ?」
『私はあってないけど?』
「そういう話じゃない。わざわざ面倒なことに首を突っ込むなって言ってるんだ。」
『はいはーい。説教には興味ありませーん。』
(ホントこいつムカつくな。)
『あっランプ光ってるよ〜早くいかなきゃね。』
「聞きたくないからって。ホントお前ってクソ面倒だな。」
そう言って、札を取る。
札というか呼び出し機だと想うが。またフードコートの一番端まで歩く。
そしてラーメンを受け取る。
舞山の頼んでいた奴のほうが美味そうだったと少し後悔した。
『お〜塩ラーメンか〜私しょうゆ〜』
「どうでもいいわ。ほらさっさと食うぞ。」
『減点〜』
「やかましいわ。」
「なんか漫才みたいだな。」
おい桐山。口突っ込んでくるな。
『そういえば、桐山くんさっきから妹さん無視して私とずっと話してるけどいいの?』
「あ。」
「お前最低だな。」
「いや、誤解だって」
「…もうそろそろ食わせてもらう。お前との話に付き合ってたら、せっかくのラーメンが冷めてしまう。すまんが食事優先だ。分かったか?」
「わ、分かった」
初めてここの塩ラーメンを頼むが意外とイケるもんだな。今度しょうゆも食ってみるか。でも次来たときは流石に直ぐ目の前にあるところにしよう。気になって仕方がない。
「ごちそうさま」
『もうそろそろで食べ終わるから待ってね〜』
「別にそこまで急かす気はないぞ。食休みしたいし」
『オッケーでももう食べ終わったよ。ごちそうさま〜』
「食器返したら行くか。桐山、妹さんもじゃあな。」
『またね〜』
「なんか釈然としないが…来週いろいろと聞かせてもらうからな、椎名。」
「ほんと兄がすみません。あと今日はありがとうございました。」
「ああ。こちらこそありがとな。」
『そうそう。ありがとね〜』
そうして俺達は食器を返し、再び舞山と俺の二人になった。
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