第15話 強制




 クラスでの話し合いはほとんどは無視しても大丈夫なことが多い。

 しかし、この役割決めは全然違う。

 当日だけでなく、他の日すらもつぶれてしまう係があるのだ。

 そもそも当日ですら仕事が多いものはやりたくない。

 特に用具係。あれは仕事が多すぎる。しかも放課後には団役員とか諸々をを決める集まりがある。

 そこでいやな役割になってしまうことも考えると、ここだけはちゃんと仕事が少ない役割にならなければならない。

 じゃんけん弱いし。

 この話し合いよりも面倒くさくなるのは確実である。

 実際に中学からずっと体育大会では団役員だ。

 もう慣れたものである。


 そう思っているとイケメン先生こと、担任の早川先生が話し始めた。


「おそらく皆は体育大会の係なんてやりたくないと思う。けど、全員一つは係を選んでもらわないといけないから、とりあえずやりたいかかりあるやつは挙手してくれ。」


 俺は手を挙げた。

 しかしほかのみんなも手を挙げた。

 昨日桐山から聞いた楽であるらしい係になろうと思ったが、やはりほかのクラスメイトも全員その係狙いらしい。

 得点係が無理となると、記録係か出発係が楽そうだ。

 最も出発係はあの空砲を打つ係すなわち、耳がとても不快になる係なのでやりたがる人は少ないだろう。

 よし。出発係にしよう。


「先生。俺やっぱり出発係にします。」


「そうか。耳が痛いと思うが頑張れよ。」


「はい。」


 まずまずというべきか。桐山は「よくその係選んだなw」と笑い飛ばしてきたが、別に楽ならば問題ない。

 経験も4回あるので特段問題ないのだ。


 放課後、二年の同じ団の男子で集まった。

 俺の団は色でいうと白である。

 ただ名前は白虎団とたいそうな名前をしている。

 他の団もそれぞれ四神の名を関している。

 黄色に玄武団は当てつけとしか思えないがそういう伝統らしい。

 ともかく結果的には団役員になってしまうだろうが、できるだけ団役員にはなりたくない。パネル係なんてもってのほかである。自分なりに抵抗しよう。


 「皆さん席に座ってください。今から団役員を決めるのですが、誰かやりたい人いませんか?いたら挙手してください。」


 先生が入ってきて、そう告げる。当然ながらやりたがる人間はゼロで…はなかった。確かあいつは…誰だろうか?顔を以前見たこと覚えはあるが名前が出てこない。有名なやつなのだろう。


「藤室さん。団役員やりたいのでいいですか?」


「やりたいってわけではないけど、多分決まらないと思ったので。」


「わかりました。藤室さんありがとうございます。」


  藤室ふじむろ 響也きょうや

 道理で聞いたことがあったわけである。この学校におけるカースト最上位の男子であり、成績優秀、運動神経抜群、部活でもテニス部で全国大会に出場する選手クラスである。その上、顔もすっごい整っている。その容姿が女子の中で話題になることも多い。

 しかし、この学校には早川先生という超絶イケメンがいるので、ここまで話題に上がることが多いといえど、普通の学校と比べると控えめに抑えられているのだろう。


「ほかにやりたい人はいませんか?」


 先生はそういうが誰も立候補する人はいない。つまり場が滞った。空気が重い。結局、先に出場競技を決めることとなった。ほとんどの競技が決まった。後はリレーだけだ。


「とりあえず50mの速さ順に並ぼうぜ。リレーやる人決めなきゃだしさ。」


 流石イケメンである。早川先生といい。藤室さんといい、イケメンはなぜこうもかっこいいのだろうか。俺は一番最後尾か…


「俺らやりたくないんだけど。朝練とかいやだしさ」


「そうそう、やりたい人にやらせればいいんじゃないか。俺はパース。」


「俺もパスだわ。部活の練習行きたいし。」


「そっか~やりたい奴いるか?」


 いないに決まっている。みんなが面倒くさがっているのが目に見えてわかる。


「あ~誰もやりたがらないなら俺がやろっか?」


「お前が?リレー?ないないw」


「だって誰もやりたがらないだろ。ついでに団役員もおれやるわ」


 つい言ってしまった。なんで言ってしまったのだろうか。言った途端に後悔した。


「あーもうそれでいいわ。解散解散~」


「…ありがとな。でもリレーはできないなら言えよ。ほかの奴に代わってもらうからさ。一応補欠ってことにはしとくから。本当にサンキューな。」


 こいつ本当にイケメンだな。イケメンってイケメンなことしかできないのかよ。すごいなマジで。

 それにしてもやってしまったな。俺はこんな面倒な事に自分から足を突っ込んでしまった。ホント自分が自分じゃないみたいだ。

 明日は…特に集まりもないか。

 どうせ退屈な日は明日くらいしかないのだから。満喫しようと意気込むのだった。

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