第16話 愚者




 木曜日の学校は個人的に一番面倒くさくなる。

 次の日が休日である金曜日はまだ余裕がある。

 しかし、木曜日お前は駄目だ。それはともかく昨日のやらかしが頭から離れない。何で立候補なんてしてしまったのだろうか。あの時の俺を殴りたい。


「おっはよー!」


「おっは〜。相変わらず元気だなお前。」


「そりゃどうも。ていうか椎名リレーやるってマジなの?」


「大マジ。何が長引くの面倒だったからつい立候補しちゃったわ。でも成るようにはなると思うぞ。」


「ほう。あの足の遅さでその自信ですか。その心は?」


「何その落語みたいなくだり。いらねー」


「おいおいノリ悪いな。そういうところはノルのが普通だろ?」


「え〜面倒くさい。あと俺は普通にもっと速く走れるから。」


「急に話戻すなよ。びっくりするだろうが。でもそっか速いのかw楽しみにしてるわw目指せ三人抜き?w」


「笑いすぎだ。あとなんで抜かれてる前提なの?」


「なんとなく?」


「酷っ。なんとなくでそれは単純に舐めてるよな?」


「そうだと言ったら?」


「処す。」


「ちょっ、痛い痛いやめてって。このやり返してやる」


「俺はお前が舐めてきたから処しただけなのに、どうしてお前はし返してくるんだよ!」


「普通やられたらやり返すだろ?」


「知らないよ。とりあえずやめてって普通にこの体勢痛いから。」


「オッケー。」


「ようやく開放される…覚えてろよ」


「はいはいw」


桐山って本当にムカつくやつだな。今度同じことしてやろうか。


 そうして1限、2限と何もなく、あっという間に昼休みになった。桐山は部活の奴らと食べるらしい。久しぶりのボッチ飯になった。別に今は机守護神になる必要はなくなったので、適当に食べれる場所を探す。できるだけ人気のないところのほうが落ち着けていいな。そうして俺は第2体育館裏で食べることに決めた。




(誰かが来る。少し離れたほうがいいか。)


 あと少しで食べ終わるというのに本当にタイミングが悪い。

 俺は体育館裏がギリギリ見えないくらいのところに座り、残りの弁当を食べることにした。


「…ってほしいんだけど。だめ?」


「ごめ…なさい。私そう…うの興味ないので…」


「い…じゃん。つれ…いころ言うなよ。」


「し…こいです…。やめ……だ…い」


なにか聞こえる。口論でもしているのだろうか?かかわり事にならないほうがいいな。無視しよう。


「ノリ…いなお前。つき…えよ。どうせ…氏いないんだろ?」


「…惑です。本当…いやって言って…じゃないですか」


 これはなかなか不味い状況なのではないのだろうか。

 こういうとき先生かイケメン君がいてくれたいいのだが、そんな都合のいい人が来るわけがない。

 どうしたものか。

 俺が行くしか…それしかないか。

 もう飯も食い終わったわけだし。

 誰かを呼びに行く暇もなさそうだし。

 そう思った俺はおもむろに飛び出して、男子生徒の肩を持つ。


「やめとけよ。これ以上やっても意味ないって。」


「お前誰?って2年のゴミじゃんw。嫌われ者がでしゃばるなつーの」


「流石にあそこまでヒートアップしてるようじゃね。無視できないっていうか。流石に嫌われ者でも出てくるよ」


「あ?下級生のクセして生意気だなお前。」


「君本当にウチの生徒?素行が悪すぎるよ。そもそも嫌がっている相手に強要しても逆効果だよ?そんなこともわからないの?」


 結果をいうとボコボコにされた。

 軽い抵抗しかしなかったからな。

 幸運なことにとりあえずどこかに行ってくれたらしい。

 俺はそのまま何ともないふりをしながら、弁当の袋を持って教室に戻った。

 正直めっちゃ痛かったが、そんな事を話してしまえば、桐山と舞山のダブルマウンテンにしこたまいじられるに違いない。

 そう思った俺は強がったのだ。

 誰かに呼ばれたような気もするし、なにか忘れてるような気もするが気のせいだろう。

 そして5から7限までの授業を受けた。

 尻にあざができたのかすごい痛くてあまり集中できなかったけれどもあのとき先輩に文句を言ったのが悪いのである。

 とはいえ、正しいことをした結果の出来事でもあったので不安はあまり収まらなかったのは言うまでもない。

 退屈なはずの木曜なのにすごい濃かった気がする。主に昼休みの一件がかなり重かった。

 あれだけでもうお腹いっぱい案件である。

 帰りは舞山と帰ることになった。(強制)

 どうやら今日は部活がないらしい。

 舞山が部活に入っている部は有名になりそうだが、そういった情報は一切ない。


(分かったコイツさては帰宅部だな。(確信))


『今日部活の先輩がさ、告白されたんだって。』


 ほうほう。爆ぜろ。ってか本当に部活入ってたのか。


「うん、羨ましいなそれ。ていうか先輩って2年?それとも3年?」


『3年の先輩だよ。それでさ、先輩断ったらしいんだよね。』


「ん?それで?」


『でも断ったのにその人がすごいしつこく付き合え付き合えって言ってきたらしいんだよ。』


 どこかで…気のせいか。


「それは大変だな。その先輩大丈夫だったのか?」


『それがさ、颯爽と現れた一人の男子生徒がさぼろぼろになりながら助けてくれたのだと。』


 え?これ俺じゃね?


『でも顔も見れなかったし、名前も聞けなかったらしいの。それにしてもかっこいいのその男子。私も会ってみたかったな〜』


「あ、そう。それにしてもスゲーなソイツ。ソンケイするワ。」


『なんでカタコトw?もしかしてその男子羨ましいしか思ったの?』


「ま、まあなそんなところ。」


『だよね〜私だったら好きになっちゃうかも。』


「お前、…チョロいな。」


『はあ?なんて言った?ねぇ。なんて言ったって聞いてるの?』


「すみませんでした。」


『よろしい』


 何だよ、俺はお前の家来かなんかかよ。

 それにしても今日の俺意外といいことしたな〜


『あ、あとショッピングの日普通に買い出しもするから。宜しく』


 急だな。あと買い出しは一人でやれ。俺はいかないからなそう思うのだった。

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