第14話 劇薬と逃避行
マジでどうしよう。かなり困った状況になった。
本当に舞山ってタイミングの悪いときにばっかり来るよな。
これって言い逃れできるのだろうか。
舞山のやつが圧を放っていてるのでそもそも俺も上手く話せる気がしない。
そもそもクラスメイト全員に告げるようなことか?
これって思うけどあまりイジメられているときと状況変わってないよな。
むしろ悪意がないだけよっぽどたちが悪いと言える。
(俺に飯食わせてくださいよ。このままでは何もできないじゃないですか。俺に選択肢はないですか?ないですね。はー辛い)
「おい、黙っててもわかんねえぞ。椎名、白状しちゃえよ。そのほうが楽だと思うぞ。」
「桐山てめえ…ていうかなんで俺に聞く?舞山のやついるじゃん。直接聞いたらいいじゃんか。なんで俺なの本当に理由がわからん。」
「いやさ、話しかけづらいじゃんか。それに比べて俺とお前は普通に話せる仲だろ?つまりそういうことだよ。」
「いや、どういうことだよ。意味がさっぱり理解できない。」
『ねぇ〜ゆう君無視しないでよ〜一緒にご飯食べよう…「舞山が喋るとややこしいから今は喋らないでくれ」…酷くない?私の扱いめっちゃ適当じゃん。』
「そうだぞ椎名。何様だよほんとにw」
「「「「「確かに〜」」」」」
「桐山、あと後ろの奴ら。笑いもんじゃないぞ。結構困ってるの?わかる?分かったら笑ってないで早く離れてください。」
「な?コイツ面白いだろ?」
クラスメイトの殆どが頷いた。最初からそういう態度取ってほしかったなと思う。過ぎたことなので今思っても仕方ない。…ともかくこの状況からなんとか抜け出せそうだ。やっぱ論点をずらすって最高だな。論破王バンザイ。よし。このままさっきの話題を忘れてくれていたら完璧なのだけど…
「でさ、話戻すけど、舞山とどういう関係?」
(忘れられていなかった、だと?くそ。俺の感謝を返してくれ論破王よ。…今論破された気がする。なぜに論破王さんまで俺の精神を抉ってくるのだろうか。解せぬ。)
「だから腐れ縁だって言ってるじゃんか。な?舞山もそうだよな?」
『え?普通に友達だけど。というか、親友まであるくらいだと思ってたのに…酷い…(www)」
(何言ってくれてんのコイツ?余計に状況悪くなったじゃん。隠れて笑うな。後で覚悟してろよ。…無理だ後で覚悟してろよとか言ったが、圧で一瞬で返り討ちに合うに違いないな。よしやめておこうか。…胃が痛いな。)
「説明しろ椎名。これはどういうことなんだ?あん?」
「…桐山ってそんな口調悪かったか?」
「話逸らすな。さ〜て答えてもらおうか。」
「舞山!そこでニコニコしてないで助けろよ。」
『いえ、先輩たちの話に加わるのは下級生の私では迷惑かな〜とw』
「急に後輩ぶらないでくれます?あと笑うな。」
「この〜いい加減白状しろ〜」
「やめろっやめろって!話す話すから本当に勘弁してくれって。」
「…言ったな。男に二言はないぞ。」
「はいはい分かってますよっと。それで…」
______________
散々な目にあった。
具体的には包み隠さず白状させられた。
特に、微妙に勘違いされないようにオブラートに包んだ内容を舞山が勝手に暴露してくるから本当に面倒だった。
青春ってもっと楽しいものじゃなかったけ。
これではイジメられていないにしろ、高校生活ハードモードのままだ。
むしろ悪化したまであるな。
特に桐山とか他のクラスメイトの男子とかすっごい睨んでくるし。
…気づかなかったが、別のクラスのやつまで覗いてきている。
これは明日噂になる。せっかくの平穏が…
「お前ただの腐れ縁って言ってたよナ?この裏切り者め。」
「だから誤解だってさっきから言ってる…『何が誤解なの?』本当にお前はややこしくなるから喋るな」
『酷いよ〜』
ゾワッとした。
この場所から逃げなければ本能が俺にそう働きかけた。
そこで俺は手を付けていない弁当をその場に残して、舞山から逃げた。
仕方ない。不可抗力である。
人間は生存本能には逆らえないのだ。
…あ〜お腹すいたな。
俺は生徒が逃げ込む最終手段と言える場所、職員室前に行った。
しかしどうしよう。職員室前まで来たのに、特にやることもない。
先生を捕まえられなくては、自分がクラスメイトに捕まってしまう。
なにか無いかとポケットの中を漁る。
あった。今朝イケメン先生に聞きに行こうとしていた数学のプリントだ。
「失礼します。2年5組の椎名優です。イケッ…早川先生はおられますか?」
「おう、椎名。珍しいなどうした。」
「あのこの問題聞きたくて…」
「あ〜これか。この数列の問題は〜」
_______
「ありがとうございました。わからなかったので助かりました。」
「他にわからないことがあればいつでも来ていいから」
「そうさせていただきます。」
イケメン先生の指導はとても分かりやすかった。冴えたイケボだったのでスーッと耳に入った。さすがイケメンだと思った。予鈴がなる。俺は急いで教室に戻った。しかし、俺はすっかりイケメン先生に夢中で忘れてしまっていた。クラスメイトの苛烈な尋問から逃げてきたことをすっかり忘れてしまっていたのだ。油断していた俺は何食わぬ顔で自分の席に座った。
「おい。お前なんで逃げたんだよ。やっぱりそういうことか?そうなのか?そうなんだな!?」
「桐山うるさい。何のことだよ。」
「しらばっくれる気か?ああ゙?」
「急になんなんだよ…あっ」
「おいおい…」
話を遮るように本鈴がなる。本当に良かった。タイミングがいい。
そう思い、忘れていた授業の準備を慌ててする。
すっかりクラスメイトから逃げていたことを忘れていた。
それにしてもこのままだと次の中休みもひどい目に会いそうだ。
昼食も食べれていない。
…授業が終わった。
俺は昼食を完食すべく慌てて口に放り込んだ。おかげでかなりキツイ。
ただ必至の形相で食べていたせいか話しかけられることはなかった。
ただそのあとの6限と7限の間の中休みに白状させられた。
そうすると何故か何人かのクラスメイトの視線がより険しくなった。
いよいよ7限か。今日はHRで体育大会について決める。
(絶対に面倒な役割にはなりたくない。できるだけ楽な仕事に就こう)
睨んでくる男子生徒を尻目に俺はそう心に誓うのだった。
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