第11話 友人
舞山の点数が気になった俺は一年生のフロアである三階に向かった。
あそこで飛び跳ねて喜んでいるように見えたのは舞山だろうか。
そうだろうな。あんな顔の整ったやつそういないし。
人ごみのせいで舞山の点数は見えなかったがどうやら舞山も一位であったようだ。
チラっとそれだけが見えた。
次の授業は移動教室だったので舞山の点数を見ることはあきらめて、教室に戻った。
「おい椎名。お前あんな頭よかったのかよ。今まですまんな他の奴らはまだかかわりたくなさそうだけど俺はもう違うからな。仲良くしようぜ。」
「うっせよー。地味に現実押しつけてくんなし…でもまあよろしく。あと、名前聞いていい?」
「桐山だ。
「うざいな。ほかに言うことねーのかよ隆二。」
「ないない。学校中の笑いもの様」
「そのネタまだ引っ張るか?二ヶ月も前じゃないか。泣いていいよね?」
「やだよ。男の涙なんてこっちから願い下げだね。」
(泣いていいだろうか。いや、今はそれよりやっとできた友人?に喜ぶべきだな。うん。喜ぶべきだ。喜…泣けてくる。いや、まだ俺は泣かないぞ。泣かない。)
「それにしてもお前…一年の舞山とどんな関係なんだよっ」
「そこまで長い付き合いでもないが、…強いて言えば腐れ縁って奴だな。」
「へーお前も苦労してるんだな。」
「それ以上にあの机の嫌がらせとか、掃除の押し付けとかはマジ迷惑だったぞ。お前は知らなくていいよなこの苦労が。」
「苦労自慢おつ。全然どうも思わないわ。」
「はいはい、マジで潰れちまえ。」
「負け惜しみ乙。それよりあの点数何なの?」
「あーね、俺頭いいから」
「うぜー」
そんなことを言っているとあっという間に朝の時間が過ぎる。
俺はこの学校で初めての友達?にすごいホクホクしていた。
そういえば舞山全然来ないな。
てっきりすぐ来ると思っていたが。
もしかして当の本人が忘れてたり…それはないか…もしかして朝の一件をまだ引きずってんのかあいつ?
放課後まで来なかったな。本当に忘れてるのだろうか。
一通りの授業が終わり、荷物をリュックに入れていると休み時間に仲良くなった男子…隆二が話しかけてきた。
「一緒に帰らね?どうせお前一緒に帰る奴いねえだろうし。」
「うっせえわ。確かにいないけどな。それで悪いか?」
「逆ギレ乙」
「お前よくあおるよな。そういえばいつも一緒に帰ってる奴らはどうした?今日は一緒に帰らないのか?」
「それならなんで俺はお前を誘ってだよ。あいつら今日部活だから一緒に変える奴いないんだよ。悪いか?」
「全然。むしろ助かる。」
______________
しばらく話しながら歩いた。
誰かと一緒に帰るってこんなにも楽しいものなんだな。
忘れていた。
舞山とは一緒に帰ったことがあるけど、あいつは圧が強くてこんな風に気軽に話しかけれないもんな。
タメ口だって命令されてるからやっているだけだ。
そもそも話すたびにびくびくしてしまう相手を友達といえるのだろうか。
否、主従関係といったほうが正しいだろう。
むしろそれ以上に丁度いい表現は存在しないだろう。
とにかく今は初めてできたこの学校の友人との会話を楽しもう。
とは言え、もうすぐで家についてしまうが。
あーもう少し遠ければなー …それはダメだ登校がだるくなる。
「やーそれにしてもお前面白いな。なんでいじめられてたのか不思議に思うわ」
「俺も何故かは知らん。」
「それよりさ、昼聞いたけど舞山さんと腐れ縁って具体的には?」
「それ聞いちゃう?家出の時に出くわして、それ以降何かと縁があるんだよ。それだけ。俺から絡もうとはしてないし、むしろあっちから絡んでくることが多いぞ。正直めんどくさいって思ってる。」
「はいそうですか爆発しろ全く。」
「そんなんじゃないから。さっきも言った通りただの腐れ縁だっつの。」
「取り敢えずそういうことにしといてやるわ。全然納得してないけどな。」
「あ、俺こっちだから。じゃあな。おっとLIME交換忘れるとこだった。ほら早くスマホ出せよ」
「はいはい。承知いたしましたよ。隆二殿。」
「うっわ、敬語似合わねなお前。いつも敬語だったけどよく考えると違和感マシマシだな。」
「相変わらず一言余計だなお前。帰るんだろ。じゃあな。」
「おう!また明日な。」
楽しかったな。
思惑通りテストで一位をとって友達ができた。
すっごい達成感だ。
久しぶりに温まった心を満喫しながら帰る。
とは言え、先日前の高校の同級生と遊んだ時も同じ気持ちになったから久しぶりという表現は間違いなのかもしれない。
そう思った。
そうやって油断していたのが間違えだったのだろう。
そこには…
……俺の家の玄関の前で待ち構えている鬼
“
俺死ぬのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます