第9話 中間考査本番

 



 朝の支度をする。今日はいつになく起きるのが早い。

 転校する前までは別に定期テストのことなんてあまり…いや、一切気にかけることはなかっただろう。

 中間考査の結果…それであらゆる僕の扱いが決まる。

 よって今回の中間考査は今までのようにただなんとなく適当に受けているようではいけないのだ。

 俺は今日の試験に向けてこれまで以上に熱心に勉強をした。

 それに勝負とやらも受けてしまった以上は、全力で挑むつもりだ。

 勝負については特に俺にメリットもないし本当にやりたくはなかったけど、あの圧におされて受けてしまっただけで、別に無視してもいいのだが。

…それはマズイ気がする。とにかく勝てばいいのだ。

 そう思い席につく。


 1日目が終わった。

 今日の教科は、物理、論理表現、古典探求であった。

 以外にも物理がかなり上手く行った。

 この程度の過去問ならそこまで気にする必要はなかっただろう。

 他の教科は言うまでもない。

 他のクラスメイトからは不満を言う声がちらほら聞こえる。

 そこまで後悔するならちゃんと勉強してくればいいのに。

 赤点取るかも〜とかそこまでのレベルだったとしても念入りに勉強しておけばどれだけ頭悪くても赤点回避くらいはできるだろうに。

 ともかくこの調子で頑張ろう。


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  2日目


 特に言うこともない。確か教科は数Ⅱと英語コミュニケーション、情報だった。

 今日も今日とてクラスメイトの阿鼻叫喚が聞こえる。

 これが普通の感覚なのだろうか?


_______



  3日目


 今日の教科は、現代文探求と化学だった。

 でも今はそんなことはどうでもいい。

…あの物理の先生またやらかしやがった。

 配るのが遅すぎる。

 ウチのクラスは全員五分前着席をしたはずなのに、なぜ試験開始のチャイムがなってなお問題が配り終えられていないのだろうか?

 しかも2回連続で、だぞ?

 第一それぞれ問題用紙と解答用紙をわざわざペアにしてからまとめて配るとかアホなのだろうか?

 あの先生はあの配り方が悪いことに気づいているのだろうか?気づいていないに決まっている。

 ST終わったら担任のイケメン先生に文句言ってこよう。


_______


  4日目


 取り敢えず監督の先生があの物理の先生でなあことに安堵する。今日は数Bと地理である。地名を覚えられていないところがあったみたいで、空欄を一つ作ってしまった悔しい。

 取り敢えず今日は帰って寝…はい掃除ですか押し付けてきますよねーそうですよねー


_______



 今日は中間の最終日だ。

 ここまで受けた教科はすべてうまく行っている。

 残りの教科は公共と保健。

 正直言ってこの2つの教科は微妙と言わざるを得ない。

 ちゃんと勉強してきているため懸念は一切ないのだが、どうして先生たちはこの二教科を最終日にしているのだろうか。

 1年はあと数Aと言語文化というそれなりの教科だというのに。

 絶対みんな勉強してないだろうな〜と思いつつ最後のテストに挑んだ。



______________



 終わった〜。

 やりきった感がすごい。

 いつもはなんとなくでやっているから、今回頑張った分そういう感情が生まれたのかもしれない。

 他に一生懸命頑張ったこともないので断言はできないけど。

 

 (あ~っ疲れた〜 早く家に帰って寝たい。さっさと掃除終わらせるか。)

 

 押し付けられた掃除を終わらせて、帰ろうとする。周りには誰もいない。

 テスト後の生徒たちは大方カラオケで騒いだり、ゲーセンに行ったりして遊んで過ごしているのだろう。

 ちょっぴり羨ましいなと思う。

 そうやって遊ぶ相手もいないので、特に何ができるわけでもないのがまた虚しい。

 おそらく一人もいない校舎を出る。

 部活がないときにはよくある光景だ。そういうときは何故かほとんどの掃除場所を押し付けられるので、帰るのは遅い。

 もっともいつもはクラスメイトの目を盗んで一人で気づかれないよう帰っている。

 押し付けられるのは嫌だから。

 でもどうしてみんなの部活がない日はこうも押し付けられることが多いのだろうか。

 遊びたいからだろうか?

 それにしては他の日は大したことないよな、全然押し付けてくる気配ないし。

 考えてもわからね〜


 『ゆう君遅いよ!何してたの?』


 どこかのラブコメで聞いたような言葉だ。

 もっともそこに恋愛的な意図はなく、ただ単に問い詰めることを目的にしているのだろうが。


「いや、遅いも何も一緒に変える約束してないよね?それにテストの間ずっと話さなかったじゃないか。そっちこそ急にどうしたんだよ。」


『えーテスト終わったしもう勉強しなくていいから一緒に帰ろかなって。』


「方向微妙に違うだろ。それに君は自転車で俺は徒歩なの、わかる?絶対に合わせれないね。」


 そういって足早にその場を立ち去ろうとする。

それに続けて彼女も追ってくる。いやお前右のほうだろ?何で俺のほう来てるの?面倒くさいからちゃんと自宅の方向に向かってください。


『そう逃げることなくない?一緒に帰ろ〜よ〜』


「イ・ヤ・だ。てか付いてくるなし。」


『そんなこと言って…いっしょに帰りたいくせに〜』


「あーうるさい。もう勝手にすれば。」


『了解!でさ、テストの出来どう?』


「自己採的にはかなりイケてる。ケアレスがあったらまた別だけどな。」


『私もそんな感じだよ〜 君ってもしかして意外と勉強できる?』


 今更気付いたのかよ。そう呆れる。頭悪いって思われてたのかな。

 俺の頭の出来をナメられていたみたいで軽く腹がたった。


「あれれ~もしかして俺が頭いいの想定外だった〜?そうか〜そうか〜…もしかして結構焦ってる?ね?ね?」


 からかうような口調でそう言った。

 実際からかっているので間違いではない。


『そんなことないよ〜』


 彼女は淡々と答える。

 どうやら本当に焦っていないらしい。

 それだけ点数が高い自身があるのだろう。


「そっか〜それは残念。」


 その後、俺の家の前まで二人で当たり障りのないことを言い合った。

 そしてそこで解散する。


…本当に何だったんだこいつ。


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