第5話 ストーカー?




 何この状況理解できない。

 誰かこの状況を説明してほしい。

 一旦整理しよう。俺は椅子を持って帰るために全力疾走で家まで走った。

 そして舞山さんは全力疾走でその俺を追いかけた…えっ?


(何それ?あははアリエナイアリエナイ)


 ふと、そう思った。

 そうしなければこの空気感に耐えられそうになかったのだ。

 今、どうにもならないような単純な恐怖心と困惑だけが俺を支配している。

 どうにも理解できない。

 これは難問だ。

 手放しでそう思う。そう思わずにはいられない。

 俺を困らせている当の本人はーというと、息切れがすごい。いやほんとに。

 そんな疲れるなら走ってこなければいいのに。

 しばらくたって、二人とも息が元に戻った。そうしてすぐに…


『もしかしてここってゆう君の家?』


 それを知ってどうするのだろうか。怖い。怖い。

 狂気すら感じられる。どうしようか。

 逃げるって選択肢と無言を貫くっていう選択肢があるが、かえってあとからひどい目に合いそうだ。

 これが詰みというやつか…


「とっ、とりあえず家入る?」


 何も考えずに俺はそういった。


『やっぱりここがゆう君の家なんだ~ お邪魔しま~す』


 やってしまった。家の場所を特定された。

 何されるかわからない。怖い。

 知らない間に盗聴器とかつけられそうで怖い。

 なんとなくそういった雰囲気の不安を感じた。

 杞憂だったがそれでもただならぬ雰囲気を感じたんだ。仕方ないだろう。


『なんかのど乾いたな~ 何か飲むものない?

 できればーだけど冷たいほうがいいな~ 』


 冷たいものなんてあったっけか?

 あ、そういえば冷蔵庫にコーラ入ってた気がする。それでいいのだろうか。

 舞山の味の好みとかわかんないし考えても無駄だなっと思う。


「多分、冷蔵庫にコーラが入ってたはずだから。勝手に飲んでいいよ。」


『ん、ありがと。これってそのまま口付けて飲んでいいの~?』


「いいよー別に。全部飲んでもかまわないし。」


『そっ、ありがと』


こいつやけに素直だな。気でも狂ったか?最初から狂ってたかそうか。そうなのか。

この発言だと俺が悪者みたいじゃないか…

でも学校だと悪者扱いされてるしあながち間違いじゃないのかもしれない。


とにかくだ。今は、舞山さんが俺についてきた理由を聞かなくてはならない。

この恐怖感が弱まればいいのだが…


「あのさ、どうしてついてきたんだ?しかも全力ダッシュとか普通しなくないか?」


『それをしてた本人がいうかな~ あっ、はい昨日忘れてたよ。』


「ありがと。LIMEしてくれればよかったのに」


『確かに~』


「あと、忘れ物届けるために全力疾走する女子もいないと思うけどなー」


『確かにー 私すごい変だった?』


「まあ変だったけど、それ以上に怖かった。」


『あははっ、なんかごめんねー』


「全然。もう気にしてないから。」


 こいつそれだけで、あんなにボロボロになるまで必死こいて走ったのかよ。


 理解できねー。


 …テントの留め具忘れてたのかよ俺。

 よかったー 別に盗聴器とかは関係なかったんだな。

 っていうか恥っず。何勘違いしてんだよ。

 俺何かされるとか思ってんだな。俺、自意識過剰かよ。

 そんなことを考えながら、俺は外の倉庫に行き、留め具とキャンピングチェアをしまいに行った。

 ふと後ろに気配を感じてチラッと視線の感じた方向見てみると、舞山さんが扉に見切れてそこにいた。

 そこにいた?


(なんで付いてきてんのこの人。軽くホラーだな。

 理由聞くの怖いから聞かないでおこう。

 正直 めっちゃ気になるけど我慢するしかない。我慢だ、我慢。

 いじめで鍛え抜かれた精神力があれば大丈夫だ。)


 そう思いながら、雑念を吹き飛ばした。

 聞いとけばよかったな。今更か。


(聞いてたら後悔してたかもしれないし

 …別に後悔する必要って全然ないよな。 でも、あ~知りたかったな……)


『でさ、そろそろだいぶ仲良くなってきたしさっ、あの日公園に来た理由教えてよ。家出ってだ けで教えてくれなかったじゃん。』


(父が家に女連れ込んだとか言いづら過ぎるんだが…)


「あれは~父さんが家に女連れ込んでそれで…」


『ストップ、ストーップ、重い!重いって。』


「でも舞山が言えっていうから…」


『ゴメンって。私が悪かったよー…』


「それで父さんがその人と…」


『謝るから~ ね?やめて?やめてってばー』


「エ?アッ、ウンゴメン」


—少し面白がっていたのは秘密だ。



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