温もりを求めて
動物病院っていうのは、お昼休憩がとっても長いの。うちは三時間半。もっと長いところもあるみたい。
これはね、手術時間を含んでいるからなのよ。下手したらご飯は十分ぐらいで交代で食べて、そのまま休憩は終わり。
でもね、手術もなくて暇な日だってあるわ。
「眠い……」
ハラノがひと言呟けば、ソラノもイケノも反応した。
「お昼寝しましょう。私、電話番するので子機持っていきます」
「ありがと〜。わたし今日ここで寝るね〜」
わかるわよ。
午前中大変だったもんね。それに、暖房が効いてて眠くなるし。
バカ犬もほら、うとうとしてるわ。
「おやすみー!」
「おやすみなさ〜い」
「おやすみなさい!」
ハラノはトリミング室。
イケノはたまり場。
ソラノは待合室。
「ソラ、ここで寝よー」
長椅子をくっつけて、タオルを敷き詰める。ソラノ作・簡易ベッドの出来上がり。
その様子を、あたしは受付から眺める。
「ママ、ミミが見てるよ!」
「ソラ、静かにね。おやすみ」
「う、うん……。おやすみ」
バカ犬がチラチラ見てくる。
でも、ソラノはソラが動かないように自分の体へくっつけるように固定しながら、寝息を立ててる。
さて、行こうかしら。
ソラノは気づいてないけど、これはあたしの密かな楽しみでもあるの。
静かに、静かに。
着地の音はどうしてもしちゃうけど、バカ犬も騒がない。こんな時は賢いって思えるわね。
さぁ、もう一仕事よ!
簡易ベッドにジャンプして飛び乗ったあたしに、ソラはしっぽだけ振ってる。大人しくしてなさいよ、バカ犬。
どこにしようかしら……。
ここ?
ここかしら?
前足でタオルをふみふみしながらベストポジションを探す。
ここね!
こう、こうよ!
あとはあたしが寝やすいようにタオルを前足で整える。前に部屋でも同じことをしてた時、ソラノに『荒ぶってるね』とか言われたけど、意味わかんないわよね。
ふー!
これでよし!
ん? 寒いの?
ソラノが少し震えたから、あたしはいつもよりもくっついてやる。
横向きに寝るソラノのお腹の辺りに、ソラとあたしが並ぶ。
「おやすみー」
「あんたまだ子供なんだからしっかり寝なさいよ」
「はーい……」
はやっ!
もう寝ちゃったわ。
でも、気持ちわかるわ。
こうして一緒に寝るのって、ほんとに、あったかい……。
ソラノが寝言で小さく笑ったのを聞きながら、あたしも夢の世界へ旅立った。
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