第15話 ガレス視点

俺はまだガキだった時から顔が怖かった。

大人から子供まで誰も近付かなかった。


顔もそんな感じな上に無愛想で無口な俺は親にも不気味がられて、皆から遠巻きにされていた。


人間にも動物にも話すどころか近寄ってもこねぇ、、、。


俺は一生このまま孤独に生きていくんだと思っていた。


だが、あの日たまたま入った森で罠にかかって瀕死になっていた狐を拾って世界が変わった。


その狐は俺を怖がるどころか、頭を擦り付けて撫でてと訴える。


尻尾を振り、嬉しそうに俺に付いてくる。

元気になってから、部屋の扉や窓を開けて出られるようにしたり、外で放しても俺が一定の距離離れたらヒヨコのようについてくる。


そんな狐に情が湧き、色々買い与え、名前も付けて、従魔登録もした。


アベリアのお陰でほんとに世界が変わった。

アベリア、、、リアといるだけで景色の色が違ってみえた。


だから、俺はリアをできるだけ大事にすると思っていた、、、のに、、、。


俺はリアに怪我をさせた、、、。

しかも俺を庇って、、、。


俺はその瞬間、ガツンと頭が殴られ、時が止まったかと思った。


全ての色が一瞬で灰になり、何も聞こえなくなった。


もし、このまま死んだら、、、。

それを考えると恐ろしくてたまんなかった。


その時、敵からの攻撃で一気に意識がハッキリとした。

すぐにその敵を切るとすぐにリアを持って走った。


そして、森の浅いとこまで戻り、安全だと確信してからリアにポーションをかける。


結構値が張る代物で、その効果はリアの傷でさえ一瞬で治した。


傷が治って少し安心したが、血濡れた体が冷たく全く動かないことに不安が過ぎる。


街に戻るとすぐ従魔専門の医者に診てもらう。

だが「こんな生き物は見たことがないから分からない」と追い出されてしまった。


ギルドにも相談した。

何人もの医者に見せた。


だが、結果はどれも同じだった。

俺は宿のベッドにリアを寝かせた。


リアを撫でるが、いつもの温かい体温ではなく、ヒンヤリとしていた。


俺は祈ることしかできなかった。

今まで俺は誰かの為に祈るなんてことはしてこなかった。


だが、リアは、、、リアだけは、、、。


それから3日経った。

リアの目が開いた。


その澄んだ空のような目が俺を見る。

そっと震える手で俺はリアを軽く撫でる。


返ってくるのは温かいリアの体温とサラサラとした毛の感触。


リアが生きていることを実感させるには充分だった。


その時、リアが驚いた顔をして、俺の方に寄ってくると頬の少し下辺りをペロリと舐める。


俺は頬に触れた。

指先で感じる頬を伝う水の感触。


それは目から流れてきていた。

涙だ。


それが涙だと気付くのに数秒かかった。

俺は今まで涙なんてものを流した記憶がなかったからだ。


だが、同時に。

俺にとってリアがそれ程までに大切な存在なんだと自覚した。


気付けば俺はリアを抱きしめていた。

リアも俺の首元にすり寄ってきてくれた。


数秒か数分だろうか。

しばらく俺たちはそうしていたが、リアの腹が盛大になった事で離れたのだった。


少し笑った俺をリアは少し怒っていたが、運ばれてきた料理を食べるとすぐに機嫌が直った。


3日ぶりのリアと共にする飯がこんなに美味いなんて思わなかった。


これが幸せというやつなのだろう。

リアと共にいる事が俺の幸せなのかもしれない。


それと共に俺はもっと強くならなければならないと思った。

リアがもうこんな事にならないように、、、。


だが、今日はリアが無事に生きていた喜びと可愛い寝顔を見れる幸せに浸って眠りたかった。


考え事は明日にしよう。

そう考え、リアを一撫ですると俺も寝るのだった。



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