第14話
森に入るとガレスの顔が、、、いや、纏う空気すらがガラッと変わった。
その顔は鋭さを増し、右手は腰にある剣の柄に置いている。
それを見た私はハッとした。
私達は命をかけてここに来たのだと。
私も気を引き締め、慎重に歩き始めた。
しばらく2人で歩いてると右斜め前から気配がした。
ガサガサと草が音をたてる。
草から出てきたのは4匹のゴブリンだと思われる生物だった。
体全体は緑で身長はガレスの腰くらいまでしかない。
耳は長く尖っていて、開いてる口からは鋭い牙とダラダラと流れる唾液が光って見える。
腰にはボロ布を巻いていて、1匹だけボロ剣を持っている。
「下がってろ。」
ガレスはゴブリンに目を離さず、一言私にそう言った。
数歩私は後退した。
私が離れてからも少しの間ガレスとゴブリンは見つめ合っていた。
先に攻撃したのはゴブリンだった。
何も持ってない1匹が石を投げたのだ。
それをなんの危なげもなく躱すガレス。
躱したガレスに別のゴブリンが爪で切りかかる。
ガレスはそれを剣で弾いた。
その隙にいつの間にか後ろに回ってたゴブリンがその手に持つボロ剣で切りかかる。
危ない!と思ったが、そんな心配などいらなかった。
ガレスはボロ剣を持ったゴブリンの胴体に蹴りを入れる。
その隙にさっき石を投げたゴブリンが爪で切りかかる。
ガレスは素早く体勢を元に戻すとそのゴブリンを剣で切る。
そのゴブリンが絶命したか確認する隙もなく、ボロ剣を持ったゴブリンがまた切りかかる。
ガレスはどうやったのか、その剣を弾いて遠くに飛ばすと剣でゴブリンの胴体を切る。
2匹はその様子を見て逃げ出そうとしたが、ガレスは一瞬で間を詰めるとその2匹を一気に切り倒した。
そして剣を腰の鞘に収めると、ガレスが私の方に歩み寄ってきた。
そして、何も言わずに私をじーっと見始めた。
コテンと首を傾げる。
「、、、怪我してなさそうだな。」
どうやら心配してくれたようだ。
お陰様で私は怪我1つなかった。
「キャン!」
大丈夫だという思いを込めてそう1つ私は吠えた。
「そうか、、、。」
そう短く返事をすると私に背を向け歩き始めた。
急いでついていく。
この日はそれを3度程繰り返し、街に戻った。
ギルドでゴブリン討伐の依頼書があるか確認し、1枚あったので、それと共にゴブリンを討伐したという印に右耳を受付嬢に渡すガレス。
そして、残りは換金してもらい、宿に戻った。
なんて事を繰り返していた。
そして、しばらく経ったある日から私は魔法が使えることを思い出し、ガレスと共に戦い始めた。
最初は扱いに慣れてない事もあり、少し失敗したりもしたけど、ガレスは1度も怒らず、呆れず、時に教えてもくれていた。
私が魔法を上手く扱えるようになっていくにつれ、森の深いところまで行くようになった。
それはつまり、戦う魔物もどんどん強くなっていった、という事でもあった。
それでも、2人で協力する事で難なく戦えていた。
その油断がいけなかったのか、あんな事が起こるなんて、、、。
あれはいつもと同じ日だった。
まぁまぁ強い魔物を2人で戦っていた。
そして、やっとあと2匹というところだった。
きっと気が抜けていたか、少し油断をしてしまったのだろう。
倒したと思っていた敵が生きていたのである。
そして、その敵が最後の力を振り絞りガレスに一矢報いようとしたのか、剣をガレスに刺そうとした。
予想外の攻撃にガレスは避けきれそうになかった。
私は勝手に身体が動いていた。
気付いたときにはその剣と体の間に飛び出していた。
グサッと剣が体に刺さる感覚がした。
刺さった瞬間はアドレナリンのせいか、あまり痛くなかったが、刺されたと認識すると激痛が走った。
だが、それと共にどこか感覚がぼんやりとしていた。
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