第8話

私が嬉しさを噛み締めていると、ガレスが案内役さんに鏡を返して、私を持ち上げる。


軽く確認すると、抱え直す。

そして物凄く分かりにくい微笑みを浮かべる。


「そんなに嬉しかったか?」


そして、優しい声でそう聞いてくる。

そんなガレスもなんだか嬉しそうだった。


「キャン!」


私も嬉しくなって、ガレスの首元にスリスリとしてしまった。


ハッとして少し固まった私をガレスが撫でてくれる。


「そうか。他にも買う。気に入ったものがあるなら教えてほしい。」


私を撫でながらそうガレスが言う。

どうやら他にも買うようだ。


今の私はガレスのペットだ。

もう何も気にしないことにしよう。


そう吹っ切れた私は「キャン!」と元気良く返事した。


それを聞いたガレスはまた歩き出した。

と言っても、私は動物なんだし、買うものなんてそんなに無いのでは?


そう思いながらも私は大人しく抱えられていた。

それから私とガレスは色々な物を買った。


私のベッド、トイレ、水入れ、皿、おもちゃなんかも買ってくれた。


正直、おもちゃは使わない気がしたけど、、、。

一通り買い終わって、腰に付けてる鞄?に全部入れる。


多分、マジックバックとかいうやつなんだろう。

異世界あるあるだけど、こうして実際に目にすると感動するものがある。


「よし、帰るか。」


そう言って店を出て宿に向かって行く。

宿につくと早々に荷物を取り出して、部屋に置いていく。


最後にドーム型のベッドを置く。


「よし、これで良いか。リアのベッドだ。入ってみろ。」


そうベッドを指す。

ベッドに近付き、少し足でクッションを踏んでみる。


もふっとした感触が返ってくる。

2、3度踏んでみるとふわふわとした感触がする。


ピョンっと入ってみる。

薄暗くて、なんだか落ち着く。


「大きさは大丈夫そうだな。どうだ?気に入ったか?」


サイズ的にもピッタリで狭くもなく、大きくもなかった。

正にジャストフィットという言葉が似合うだろう。


そのサイズ感もまた落ち着く要因の一つとなっていた。

だから、ガレスの質問は愚問というものだった。


「キャン!キャウン!」


だから、思いっきり尻尾を振ってガレスに擦り寄っても仕方ない。

そう、仕方ないのだ。


「そうか。良かったな。これからは俺の狭いベッドで寝る必要がなくなるからな。」


そうか、、、。

私、これからはこのベッドがあるからガレスと一緒に寝なくて良くなっちゃったのか、、、。

そう、、、、なんだ、、、、、。


「ん?どうした?」


私が少し悲しい顔をしてしまったからか、ガレスが少し不安そうな顔をしながらそう私に聞く。


いけない!

折角買ってくれたんだもん!

悲しい顔しちゃダメだ!

ガレスが困っちゃう!


そう思った私は無理矢理気分を変えて、尻尾を振りながらガレスの手に擦り寄る。


「何もないなら良いが、、、何かあるなら言えよ。」


それからはなんだか時間があっという間だった。

多分、考え事していたからだろう。


そして、あっという間に寝る時間となった。


「おやすみ。また明日。」


そう言ってベッドに入るガレス。

私は自分のベッドに入る。


でも、全然眠れない。

落ち着くことは落ち着くし、眠い事は眠いけど、眠れる気はしない。


どうしよう、、、。

ガレスのベッドに入ろうかな?

でも、折角買ってくれたし、、、でも寂しいなぁ。


そう考えていたらパッと部屋が明るくなる。

さっき暗くしたのに、どうしたんだろう?


「どうした。」


ドーム型ベッドの穴から覗くように私を見ながらそう聞くガレス。


え?どうしたって、、、何が?


「首傾げているが、、、自覚ないのか?鳴いてたぞ。」


、、、え!?嘘!!

全く自覚ない!鳴いてた!?

あ、寂しいって思っていたし、声出ちゃってたのかぁ、、、。


「何かあった訳ではないのか。なら大丈夫か。」


そう言ってまた灯りを消すガレス。

そして、再び暗くなる部屋。


ガレスがベッドに入る音がした。

私はその音を聞いてある覚悟を決めた。











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