第7話

「朝から元気だな。」


そう言ってガレスが頭を撫でてくれる。

少しわしゃわしゃと撫でると頭から手を退けてベッドから降りる。


その顔がいつもより真剣というか、厳ついというか悩んでいるような顔になってた。


「今日も出かけようと思う。疲れてないか?」


服を着替えながらそう聞いてくる。


て!ちょちょちょちょ!

私!私いるから!そんな堂々と!!

わーーーー!!!!


慌てて顔を背ける。


ガ、ガレスのふっ、腹筋が!!わわわ!


「おい。大丈夫か?流石に疲れたか?」


ちょーーっと!

半裸のまま回ってこないでよ!

疲れてないから!大丈夫だから!

こっち来ないでぇぇぇぇぇ!!


すぐに目を閉じる。

そして、首を思いっきり横に振った。


「そうか?まぁ、無理するなよ。今日は色々行くからな。」


そう言ってガレスが離れていく気配がした。

ホッとして目を開けるが、絶対にガレスの方を見ないようにした。


ゴソゴソと服を着替える音が止む。

そっとガレスの方に目を向けるとちゃんと着替え終わっていた。


「よし、行くぞ。」


そう言って私を優しく抱っこするガレス。


ガレスっていつも私を抱っこするよねぇ。

小さいから迷子になりやすいってのもあると思うけど、抱っこ好きなんじゃないかな?

だと良いなぁ。


私を抱っこしながら宿を出ると昨日とは逆の方向に向かってガレスが歩き出す。


しばらくすると昨日見たギルドよりもおっきい建物が見えてきた。


「デカいだろ。今日はあそこに用事がある。」


なるほど。今日はあそこに向かうんだね。

それにしても大きいなぁ、、、。

私が小さいから余計に大きく見える。


その建物につくと早速扉を開け、中に入る。

広がる空間と奥には階段。

左右には扉がある。


「お客様。」


そう声が聞こえてそちらを見ると40代くらいのメガネをかけた男の人が立っていた。


「お待たせ致しました、お客様。本日はどのような物をお求めで?」


胸に手を当て、軽くお辞儀をしてそう言う。

その姿はまるで執事のようだった。


だが、嫌味な感じはしなくて、見蕩れる程に綺麗だった。


「この子用に色々と買い揃えたくてな。案内を頼む。」


この子?って私?

え!?私の物を買うの!?

そ、そんなそんな!


と心の中であわあわしている私のことを抱えながら案内に従い歩いていくガレス。


階段を上り、左の扉に入る。

そこには色んな物がズラッと並んでいた。


「まずはどのような物をお求めで?」


部屋に入って早々にそう伺うように言う案内役さん。


「そうだな、、、まずはこの子の首輪をどうにかしてやりたい。何かこの子に似合いそうな物はないか?」


そう言いながら首輪に触れるガレス。

未だに付いていけない私を置いて何個も見て、何個も私にあてて確認していく。


その中でも私はある物から目が話せないでいた。

それはまるでネックレスのように細く、綺麗な銀色のチェーンと飾りがついていた。


その飾りには赤い宝石が真ん中についていた。

それはまるでガレスの温かい目を見ているような気持ちになる。


「ん?、、、これが気になるのか?」


そんな私に気がついたガレスはそれを手に取る。

そして、じっとそれを見ると私を見る。


「、、、ほんとにこれが欲しいのか?」


なんだか、そう言われるとなんだか照れくさく感じる。

だけど、それを付けられたらどんなに嬉しいか。


「キャン!クゥーン、、、。」


でも、迷惑はかけられないし、、、。

高いなら諦めるよ?


「そんな風に鳴くな。別に問題はないはずだ。」


ほんとに!?

私、それがいい!


「その尻尾が全てを表してるな。よし、これにしよう。」


やったー!!

って!私、キラキラに負けた、、、。

うぅ、、、でも今はただのペットだし!


「これの代金は先に支払う。付けても?」


そう首輪と金貨らしきものを持ちながら案内役さんに聞くガレス。


「えぇ、勿論でござます。」


それを聞いて1つ頷くと金貨を受け取り、銀色と銅色の、、、多分銀貨と銅貨を返す。


ガレスはそれを受け取るとしゃがんで、私を一旦下ろす。


そして、昨日付けてもらったやつを外すと今さっき買った新しい首輪を付ける。


私を持ち上げると少し確認するような動作をとる。


そして案内役さんがいつの間にか持ってきていた鏡を受け取ると私を片手でしっかり抱っこし直す。


「どうだ?」


ガレスはそう言い、鏡で見せてくれる。

そこにはくっきりと映った白い狐の姿があった。


その首には今つけてもらった首輪があった。

もふもふのせいで銀色のチェーンは見え隠れしていたが、赤い宝石はきれいに見えていた。


その色はやはりガレスの瞳に似ていて、なんだかとても心が暖かくなる。

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