第2話 キミはアヤ、ボクはミイ?

 ボクはどうしてこんな所にいるんだろう?

 寒空の下倒れたと思ったら、気がつけば人間がやってる病院にいて、少ししてから一軒の家に連れて行かれた。


 そしてその家で待っていたのは。


「よかったー、ネコさんげんきになったんだ」


 あの日意識をなくす前、ボクに話しかけてきてた女の子。

 どうやらここは、この子の家らしい。


 けど何のつもりだ、こんな所に連れてきて。


「なまえをつけなきゃね。キミのなまえは、きょうからミイだよ」


 名前だって?

 冗談じゃない、勝手に決めるな。


 フーッと全身の毛と尻尾を立てて威嚇すると、女の子はビクッとする。

 ……ちょっとおどかしすぎたかな? だけど女の子は、穏やかな声で言ってくる。


「しらないおうちにきたから、こわがってるんだね。でも、わたしもパパもママも、ミイのこといじめたりしないから」


 信用できるか。


「わたしはアヤ、アヤだよ。これからなかよくしようね、ミイ」


 アヤ、かあ。変な人間。

 こっちはさっきから威嚇してるのに、逃げるわけでもイジメてくるわけでもなく、話してくるんだもの。


 どうしよう。本当ならすぐにでも出ていきたいけど、外は寒いからなあ。

 いていいって言うなら、しばらくいさせてもらおう。

 ただしアヤ、キミに気を許したわけじゃないからね!


 ……そんなわけで、その日からボクとアヤは一緒に暮らしはじめた。

 アヤはやっぱり変な子だ。ボクがいくらそっぽ向こうと、めげずに話しかけてくる。

 それにイジワルもしてこない。

 時々ボクのアゴの下辺りをなでてくるけど、そしたらほわわ~んとしたいい気持ちになる。


 アヤ……この子は今まで会った人間とは違うのかなあ?

 はっ! いやいや、騙されないぞ。

 人間は乱暴で悪いやつなんだから。


 だけどある日のこと、アヤの姿が見えなくなった。

 どうしたんだろうって思って家の中を探してみたら、どうやらカゼをひいて寝込んでいるみたい。


 まったく、なにやってるんだよ。

 アヤは布団に入って、ハアハアと苦しそうに息をしている。


 大丈夫かー?

 苦しくないかー?


 アヤの枕元までやってくると、その顔を肉球でぷにぷにとつついてみる。

 そしたらアヤ、ボクの手を取ったかと思うと、さっきまで苦しそうにしてたのにニッコリ笑いだした。


「しんぱいしてきてくれたの? ミイはやさしいね~」


 違う、そんなんじゃない。

 ……けど、少しくらい側にいてあげてもいいよ。




 幸い、アヤのカゼはすぐに治ったけど、それからは前にも増してボクになついてくるようになった。

 ……まあいいか。アヤは他の人間とは違うから。


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