アヤ模様の日々🐾

無月弟(無月蒼)

第1話 人間はキライだ

 冷たい風がビュービュー吹く公園の中を、ボクはピンと尻尾を立てながら歩いて行く。

 ボクは名前の無いノラ猫。気づいた時にはひとりだった。

 声をかける事もかけられる事もない、ひとりで生きていく灰色の日々。


 寂しくないかって? べつに平気だよ。

 けどひとりなのはよくても、寒いのは苦手だからさ。

 早く暖かい場所を見つけて、休みたいよ……。


「わっ、汚ねー猫がいるぞ」

「コラー、あっち行けよー」


 うわっ、何するんだ?

 ボクを見かけた数人の男の子が、石を投げてきた。

 早く逃げないと。


「ははっ、これでも喰らえー」


 痛っ!

 飛んできた石が背中に当たったけど、ボクは振り返らずに駆け出して行く。


 人間はキライだ。いつもボクにイジワルするんだもの。


 ボクは公園を抜けると、ヨロヨロと道を歩いていく。

 さっき石をぶつけられた背中が、ズキズキと痛む。


 痛い……。

 痛い……。

 ボクが何したって言うんだ。

 人間なんてキライだ。人間なんて……。


「あ、ネコさん」


 歩いていると、突然後ろから声がした。

 なんだ、人間か!?


 ボクはピョンとジャンプすると、振り返って臨戦態勢を取る。

 身を低くして、声の主を睨み付けると、そこにいたのはさっき石をぶつけてきた男の子達よりも、ずっとずっと小さな女の子だった。


 なんだ? お前もボクをいじめるのか?


 だけどその女の子は、なぜか悲しそうな顔をする。


「たいへん! ネコさん、ケガしてる!」


 ボクに向かって、女の子は手を伸ばしてくる。


 来るなー!

 ボクが爪をを振るうと、女の子はビックリしたみたいに手を引っ込めた。

 どうだ、まいったか。まいったならどっか行け。


 だけど女の子は立ち去らない。

 それどころか、もう一度手を伸ばしてくる。


「だいじょうぶだよ。こわくないからこっちにおいで」


 うるさい、放っておいて……うっ、なんだか頭がクラクラしてきた。

 最近ろくにものを食べてないし、眠れてなかったから……かな……。


「ネコさん!? しっかりして!」


 意識を失うボクの体を、温かなぬくもりが包んだ気がした……。





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