重い女

オフライン猫

重い女

「うそ…増えてる」


私は体重計の数値を見て、思わず声を出てしまった。


楽しく過ごした誕生日だったのに、家に帰って長年の日課になっている入浴前の体重測定をしたら昨日に比べて4キロも増えている。


確かに体重が増える出来事に心当たりはある、しかし今までどんなに体重が増えたとしても一日で3キロ以上増えたことはなかった。


何故今日に限って4キロも増えたのかと考える。


まさか…歳?


そう考えると昨日に比べて肩もなんだか重たいし、身体もだるい気がする。


考えれば考えるほど、段々とネガティブな気持ちになっていく。


しばらく思い悩んでいるといつの間にか洗面所に入って来ていた妹が私に声をかけていた。


「うわっ、姉ちゃん何それ」


妹の顔はドン引きした人のソレだった。その顔を見ると今までの鬱々とした気持ちより気恥ずかしさが勝って、逆に冷静になった。


「あんまり姉のデリケートな姿を見るんじゃない」


「はーい」


私が嗜めると妹は素直に返事をし、歯を磨き始めた。


さて、太った原因は今日にあると考えて今朝から自分の行動を振り返ってみる。


まず朝食はいつも通りだった。ここで体重が変わるとは考えられない。その後は通勤していつも通り働いて、夜に用事があったから昼食は抜いたし___間食はしたけどそれもチョコレートくらい。


だとすると原因は夜にあるとしか考えられない。

夜は私の誕生日を彼氏が祝ってくれて、素敵なディナーに高級なプレゼント、私の見たかった映画を見て先ほどまで一緒に過ごしていたのだった。


心当たりといえばディナーは出された分は全て食べたし、映画館では塩バター味のポップコーンも食べたくらいだろうか。


確かに我ながら一日で贅沢したとは思う。


けど、今日までの体重の増え方を考えると自分の感覚的には増えても2キロちょっとくらいのはず。


こんなに太ってたら彼氏に嫌われちゃう。


体重計とお腹を見比べて唸っていると、歯磨きを丁度終えた妹が呆れ顔でこう言った。


「お姉ちゃんさあ、唸ってないでその重そうなネックレス外したら?」


その視線は私の胸元にある金でできた、まるで鎖のような太さのネックレスに向かっていた。


私は妹の言っていることが全く理解できなかった。私が大切なものを大事にする性格だと妹が知らないはずがないからだ。


「これは彼氏からのプレゼントなの。外せるわけ無いじゃない」


このネックレスは今日のデートで彼氏がプレゼントしてくれた大事なものだ。

基本外さないつもりだし、外す必要がある時でも彼からの愛を常に感じるために肌見離さないようにするつもりだ。


私の言葉を聞いた妹は大きなため息を吐き、ボソリとこう呟いた。


「だから、それが『重い』んだって」


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