第4話 大福餅の精霊
三代目お猫様こと、三毛猫のみー(子)ちゃんは私が拾ってきた猫だった。
まだ手のひらサイズくらいの子猫の時に、ねずみ取りに引っかかっていたところを救出された。
その人見知り、猫見知りな性格のゆえ、飼い主となってくれたお家に馴染めず、居場所を転々として、最後に私の元へとやって来たのだった。
怯え続けている子猫をどうしてあげればいいのかわからず、その日はカンガルーのようにパジャマに包み込んで一緒に眠った。
結果、何故だか仲良くなった。
ただ、布団の上にう◯ちをされたのは未だに解せない。(いい思い出)
子猫というのは、ふわっふわの綿毛のようである。そして、チーチー鳴く。
激しくかわゆい。
そして、一番驚いたことが雌猫のマシュマロボディである。
一代目、二代目お猫様は雄猫だった。
二匹ともマッチョカチカチボディだった。
それが、どうだ!
女の子というのは!
やわらかい!
いい匂いがする!
小さくてふにふにしている!
おっ、俺が守るよ……。
思わず初恋が成就した男の子の気持ちを理解してしまいそうになるほど、オスとメスのあきらかな違いに私は打ちのめされていた。
それは、もう。メロメロである。
「大福〜、大福〜。あなたは、大福なの〜? 大福の精霊なの〜?」
お猫様のもっちもっちの頬を撫でながら、私は歌った。
この子、本当に大福餅なんじゃないか? と思い至っては深いため息をついた。
白く輝いて、まるまるしていて、それでちびっこい! かわゆい!
私が目に入れても痛くないほど溺愛していたみーちゃんは、先住猫であるマロンガチ勢だった。
マロンが中年のおじさんくらいの年齢で、みーちゃんはピッチピッチの中学生くらい。
みーちゃんは兎(猫)に角、マロンの追いかけまわした。彼女は毛づくろいをしてあげたくてたまらないのだ!
だが、マロンは一匹狼(猫)の性格。
突然の年若い女子からの猛烈アタックにビビり散らしていた。
「大好き! BIG LOVE! ワンチャン(キャットチャンス)付き合おう!」
追い回すみーちゃん。
「黙れ、小娘!」
もののけ姫の犬神のごとく、マロンは一喝する。だが、ギャルには通用しない。
ついには、マロンを押し倒して無理矢理毛づくろいをするみーちゃんであった。
二匹が仲良しになったのかというと、そうではない。
避妊手術をした後、みーちゃんは大人しくなった。突然、思い出したように猫見知りを再発し始めたのだ。
二匹は常に、四十センチほどの距離を保っていた。決してくっつくことはなかったが、時々、みーちゃんがマロンのしっぽを触りながら眠っている姿があった。
そして、それを許すマロンの姿も。
マロンブームが去ったみーちゃんは、再び私と過ごすようになった。
気を許してくれているのだろうか、みーちゃんはよく、私の顔の上にのって寝ていた。
お猫様が顔の上に! なんと光栄なことか!
猫パックというのは、美容にも精神的にも効果があることが判明された。(※個人的な感想です)
ただし副作用として、大きな大福餅を顔にのせている夢を見ることがあります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます