別れ、そして……

 2002年、春頃からだったか。

 彼女は徐々に弱りだしていった。

 もう十八年、猫の寿命としては平均くらいだし。


 家族も皆、薄々は覚悟していた。

 あの子は心配してんのか分からんが、べったりくっついて一緒に寝てたりしていた。


 そして夏、最初に書いた通り……。



 あの子は寂しそうに彼女の体を舐めていた。

 後で思うとあの子は誰かの使いで彼女を看取りに来てくれたのかな、だった。

 

 あの子はその一年後、おそらく二年にも満たない短い生涯を終えたから……。


 


 その後は住んでいた家からも引っ越し、その数年後に僕は大阪を離れ、五年ほど東京勤務となった。


 一人暮らしはこの時が初めて、というか父は僕が二十歳の時にさっさと逝きやがったし体弱って歩行困難な祖母もいたので家を出る選択肢はなかった。

 

 まあなんとかやってたが、やっぱ肉体的にも精神的にもしんどい時もあったな。

 そんなある冬の夜。


 夢うつつで寝ていると、胸に何か乗っかってきた。




 なんや寒いのか、入ってきて。

 ほんと久しぶりやな。

 思えば僕の布団にはあまり入ってこんかったが、たまには入ってきたな。


 ああ、温かいなあ。


 ……うん、ありがとな、来てくれて。

 

 そう言った時、スッと乗っていた感覚が消えた。

 

 ただの夢だと言われそうだが、僕は本当に彼女が来てくれたと思っている。

 



 改めて、ありがとね。

 うちに来てくれて。

 たくさんの思い出をくれて。

 励ましてくれて。

 

 本当に、感謝してますよ、ミーコ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る