たくさんの小さな命

 彼女が来てから一年と少し過ぎたくらいだったかな。

 彼女のお腹が大きくなっていた。


 ああ、猫増えると当時は大喜びだったが、後で思ったらいったいどこの野郎が孕ませたんだだった。

 彼女は普通に外出て散歩して帰ってくるってか、昭和の時代で家に誰かいるなら鍵かけてないとこばっかだったし、よその猫が家入ってきてもおおらかだった。

 うちにもたまにどこかの猫が入ってきてたし。

 というか近所の人も玄関先までは普通に入ってきてたな。

(いや地域性かも)


 そしてこたつ出してた寒い頃。

 彼女が五人の子供を産んだ。


 用意してあった箱の中で子猫達が一生懸命お乳吸ってた。

 ああ可愛いなあと、僕達兄弟で見ていたもんだ。


 

 今ならよく分かるが、六人も家には置いとけない。

 どこかへやるのは嫌だったけど、我慢するしかない……。



 子猫達は乳離れした頃、貰われていった。

 そのうちの一人は近所のお姉さんが貰ってくれた。

 悲しいけど、大事にするからねと言ってくれたので我慢できた。

 そのお姉さんはしばらくしてから引っ越していった。 

 きっと元気にしていただろうと思う。



 彼女はしばらく寂しそうにしていた。

 一番悲しいのは彼女だよな、と思った。



 で、そこから一年後、また彼女が妊娠した。

 父親はまあおそらくあいつだろう、となっていた。

 たまーにうちの裏庭に来てた真っ白な野良猫。

 今思うと真っ白と真っ黒かい、だった。


 今度は七人だったが……生まれてすぐ一人が亡くなった。

 そしてもう一人も数ヶ月で……。

 

 残った猫達は元気だった。

 集団でドタバタ家中を走ってた事もあったなあ。 


 けど、やはり別れのときが……。

 今度は役所を通じてもあり貰われていったが、息子一人だけ残した。

 こいつがまた甘えん坊だった。

 一年過ぎても乳離れしなかった。


 

 そしてまた数ヶ月後、彼女がまたお腹大きくなってたのだがどうも様子がおかしい。

 ある程度から大きくならなかったから。

 これ腹出てるだけなのか病気なのかとなって獣医さんに来てもらって見てもらったら、お腹に子供がいるとの事。

 すぐに連れて行ってもらった。

 結果としてはお腹の子は全員死んでいたそうだ。

 原因は今となってはもう分からない。


 そして避妊してもらったと後で聞いた。

 

 彼女、辛かっただろな……。

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