006:お仕置きは逆に愛を示す行為なのだ
ベッドの上には可憐なお嬢様が身体を震わせ、悶えていた。
「うにゃあぁあああ!? 辞めてー……壊れちゃうかもー! ひぃ……! あうぅ……!」
三由季は枕を抱えながら涙を浮かべて荒い息を殺し、満桜とレイティナの責めに耐えている。
満桜一人だけの仕返しならば耐えられると計算した悪戯であったが、まさか伏兵が潜んでいたとは思わなかったアホ娘。
満桜のことだし行けるだろうと高を括った犯行は、裏目になったのである。
しかし、まだ三由季は耐えていた。
案外襲われるのも悪くないと思い、この律動的な振動を受け入れながら満桜に粋がって微笑みを見せ、
「まだ余裕ありそうね。追加に足ツボもやっとくか」
「待って、満桜ちゃん! それはまじ……うぎゃぁぁぁあぁあ!? 痛い痛い! 痺れてる! 痺れるって!?」
血も涙もない無慈悲な満桜の「高周波器と激痛足ツボの刑」に、三由季は情けない悲鳴を上げていた。
◇◆◇
機材提供者レイティナの協力により、無事執行完了。
調子に乗って満桜の怒りに触れてしまった三由季は、かなり痙攣しているがどこも異常はない。
納得のいく仕返しによって冷静さを取り戻した満桜は、微かに赤くなった顔で乱れた制服を整える。
三由季は軽いスキンシップのつもりで一線を越えてしまう恐ろしいお嬢様だ。
春休みを挟んで2週間ぶりの再会だったから、つい暴走しちゃったのだと思いたい。本当に。
「さて三由季、この部活の説明をお願いね。部屋にしては豪華だけど、どうしたの?」
「ぐぎぎ……ちょっと待って。今の私、辛い……」
「私は気にしないから」
「鬼畜な満桜ちゃんも、いい……」
ボソッと何か言っているが、満桜は気にしない。
むしろ、気になったのはここの部室であった。
部室にしてはかなり異質だ。部屋にしては過剰というか、壁やら天井やらが頑丈そうな作りになっており、教室とは違った形をしていた。
満桜はここまで歩いた通路を思い出そうと振り返る。
通路にしてはちょっと長い廊下、何階のも地下へと続く階段、そしてあの鋼鉄なドア。
「もしかして……核シェルター?」
「いぐざくとりー。そうだよ、いい部屋貰っちゃった」
「貰っちゃっ……た?」
貰ったのではなく借りたのだと言い返したい満桜だが、これ以上は話が進まないので何も言わない。
そういえば前に、先生たちが使わなくなった古い部屋を再利用する話を耳にしたことがあった。
ここまで広い施設ならば適当に申請して私物化すればよかったなど、頭によぎったが何とか振り払う。
やっと激痛から解放された三由季が、ベッドから起き上がって部室の説明を始めた。
「よいしょー。先生にダンジョン探索やりたいって言ったら、自由に使っていい部屋を貰っちゃったの。ほら、私って先生から期待されているし」
「そういえばあんた、先生から優秀なステータスなのに、どうして人と組まないのって悲しんでいたね」
「知らない人と組むの嫌だし、話しを合わせるの面倒」
「……ん? 部員は何人なの?」
「満桜ちゃん入れて二人! あっ、満桜の隣にいる人も含めたら三人になるのかな? たった今作ったグループだし」
どうやら三由季は自分のペースでダンジョン探索したかったらしく、今まで誰も組んでいなかったらしい。
何とも言えない表情をしている満桜を見た三由季は、満面の笑みで「最初の開拓する苦労感が面白いし」と、付け加えた。
満桜はとっくに
「んで、そろそろ満桜ちゃんの友達を教えて欲しいんだけど」
「あっ、忘れてた。この人は私のスキルで召喚した眷属、かな?」
椅子に座っていたレイティナは、三由季の方を向いて自己紹介をする。
満桜と出会った時の痛々しい修理跡は綺麗に直していた。
しかし、レイティナが言うには直したのは見た目だけで、まだ使える機能はほとんどないとの事だ。
「ほほーん。だからダンジョンに無反応だった満桜ちゃんが、珍しくやる気を出した訳か」
自己紹介をするついでに、満桜がダンジョン探索に乗り出した切っ掛けを言う。
もちろん、特大級の爆弾である満桜の職業については隠しつつ、違和感を持たれないよう話していく。
だが、一通り話しを話を聞いた三由季は、何かもの言いたげな目で満桜を見つめ続け、
「……分かった。とりあえず納得してやる」
と、不満気ありそうな感じを出してそっぽを向いた。
彼女の隠し事に人一倍敏感な三由季には、お見通しらしい。
深く追及して慌てる満桜を見るのもいいと思ったが、ここは敢えて探らない。いい女の三由季なのだ。
「よーし、早速ダンジョンに行こうぜぃ。まずは実績解除じゃ。そろそろ満桜ちゃんも戦いたいでしょ?」
「それはいいけど、部員は募集しないの?」
「これ以上待っても人は来ないって。分かりやすい功績作ってから考えればいいや。誘える人いないし」
「私たちの心を抉る言葉を言うな」
「それじゃ……――」
快調になった三由季は、満桜の手を掴んで駆け足ダッシュ。
「――えっ?」
気付けば満桜は、ガッチリとお姫様抱っこで拘束されてた。
「しゅっぱつー!」
「おい! 離せ! んにゃあああ――っ!?!?」
こうなってしまうと抵抗するだけ無駄。止まるまで受け入れるしかない。
せめて、スカートをはだけるのだけは防ぎたい満桜なのであった。
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