第2話「目覚めたわたしは。」

…移動されている??


これは新しい体にわたしの魂と呼べるものが移されている感覚だ。

新しい体の中でわたしは展開され、

体を動かすために過去の経験が体と紐づいてゆく。

体表が適度に暖かいのを感じる。思えば多分、目も開く。

音声というのは流れ込むものなので、不意になにかが聞こえた。


「それ女の子だったのに…男の体でいいの?」

「すぐ持ってこられるのってこれくらいだったんみょ!」


えっ。…男の… うわあ。


「あっ。しゃべった。」


そばに女の子が二人。一人は人間だろう、もう一人は…天使?


「骨董品だったけど、動いてるみぇ。」

「いつから眠ってたのかしらねー。あなた、いつから眠っていたのか分かる?」


そう言われても…。むしろ今がいつなのか。

わたしは動かなくなって押し入れにでも

仕舞われていたのだと思うのだけれども、

ここは…押し入れのはずもなく、どこか廃墟のような…。

地震でもあって倒壊したのか。

滅茶苦茶になっている、そんな場所だった。

横には、元のわたしが半分、壁の下敷きになって埋もれていた。


「面白いものが見つかったわね。じゃ、出ようか。」

「とりあえず我々についてきたまぇ~。」


ロボットのわたしがここに居てもしょうがないしな。

わたしは人間の女の子と、妙な口調の天使を

わたしの暫定所有者としてついて行く事にした。


日本は地震の多い場所だけれど、

進むごとに酷い事になったのだな、と感じる。

…建物の様式から少し違う?

わたしの所有者家族が変わっていなければ、

場所は日本の真ん中あたりだと思うのだけれど。

殆どあたりは水没していて…。

ここに在ったのは、所有者家族の家だったのだろうか?

…もしや、と類推し名前を聞いてみた。


「名前?…そんな簡単に個人情報を明かすわけがないでしょう?」

「むかしって、そんな大雑把だったんですかめぇ?」


あ…いえ。はい、そうですね。


「じゃあ、仮にわたしをイブとしましょう。あなたはアダム。

 世界にわたしとあなたの二人だけみたいで良いでしょ、ふふっ。」

「それだとあたしが蛇になってしまうのめぁ!あたし大天使ラファエル!」

「あんた全然ラファエルって感じじゃないでしょ。ウリエル、縮めてウリで。」

「むしろイノシシっぽいも!!」


そうか…もしかしたら名前で検索されるかもだしね。

…ネットワークはオフになっているな…。


ウリ「天使の体なのでweb10接続は機能してるけど遮断してるむぃ。」


え?もしかして。


ウリ「聞こえてるも。あんた何するかわからないし

   先に察知する義務があたしにはあるんだも。」


管理されてたんですね。


イブ「こら。あなたたちだけで会話しない。」

ウリ「すんませんっしまぁー!」


いつの間にかグループチャットみたいになってたんだな…。

それにしてもweb10ってなんだろう。web3.0とかは昔言ってたものだけれど。

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