解決策はない。

土師 夜目視(ハジ ヤメミ)

第1話「ロボットのわたしは。」

わたしがはじめて買ってもらえたのは、

「家事で使えそう」…だからでした。

ですがわたしの性能では、4人分の家事を十分にこなす事はできませんでした。

ご家庭は裕福でしたので、

わたしはすぐに高性能な新型に買い替えられて、そのまま売りに出されました。


次にわたしが買ってもらえたのは、新品の時に売り場で見ていた男の子でした。

ですがわたしはそこでもまた、売られる事になります。

なぜなら皆、男の子よりもまだ珍しかったロボットのわたしを気にかけて、

男の子をないがしろにしたからでした。


次にわたしを買ったのはアルバイトの男性でした。

そこそこ知識のある方で、わたしは容姿から大幅に改造され、

おひとり相手でしたので、ほどほどに家事もこなせました。

ですが今度は彼女さんにとって代わられました。


そうしてわたしは、売り場で長い時間を過ごす事になりました。

その頃になるとわたしは主を転々とした挙句、

どこに行けなくても不思議はない、性能の低いロボットでした。


ですがわたしを買ってくれる人がいました。

お店で働いていた、あの時の男の子でした…。


男の子に彼女が出来ました。

ですが今度のわたしは売られませんでしたので。

わたしはその家族を見守って、受け継がれ、

そうして長い時を過ごしました。幸せな時間でした。


ですがある時からわたしは記憶を無くしています。

記憶の圧縮を繰り返していました。増設もしました。

ですがメモリーには欠落が見られます。

どこか記憶装置は限界だったのでしょう。

いつしかわたしはそうして、ずっと眠っていたのでした…。

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