旧医院の寝所
きし あきら
旧医院の寝所
そうしてどのくらい
ながくて浅い
息をしていたろう
もう蝋燭のにおいもしない
薄ぺらの冷たい枕は
すこうし柔らかくなった
それでも凍えるようなのは
四角な窓がらすに
布がないからだ
静かな木々
黒くはしる枝
夜よりもっとくっきり暗い
彼らはおそらくは
こんなとき
わたくしが泊まる前までは
雨をとらえ
星をとらえ
じぶんで
秘密のあそびをしていたろう
いまわたくしが眠られず
こうして見ているので
彼らも身じろぎひとつせず
そらの飾りになっている
(あなたたち
明日にはそこに布がかかります
わたくしは
しばらくここへと泊まります)……
旧医院の寝所 きし あきら @hypast
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