第10話
ガチャリ、とドアが開く音がする。早まる鼓動とは裏腹に、時の流れが遅くなったように感じる。ピンクのハイヒールの爪先が目に入り、健斗は顔を上げる。兵士は一緒ではなく、貴婦人のみだった。
「これで良かったのね?」
健斗は貴婦人をしっかりと見据えながら無言で大きく頷いた。もともと盗みに入ること自体一攫千金を狙った大きな賭けだったのだ。バレた時点で健斗はその賭けに負けたのだ。どんな条件であろうと受けて立つ覚悟はできていた。
貴婦人は満足そうに少し口角を緩めると、
「来なさい。」と健斗に行って別の場所に向かって歩き出した。
暫く歩いていると、暗く長い廊下を抜けた先に頑丈な扉で閉ざされた部屋に到着した。貴婦人が慣れた手つきで扉の横の装置に暗証番号を入力すると、重い扉がゆっくりと開かれた。その先に広がっている世界に、健斗は唖然として、言葉が出なかった。
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