第9話

それはマスターのことだ。マスターは健斗の実の父親のような存在だった。母親が亡くなり、路頭に迷っていた健斗をずっと気にかけてくれていた。新居を見つけるまでマスターの家に住まわせてくれたり、職探しを一緒に手伝ってくれたりと健斗を献身的にサポートしてくれた。「なぜ、そこまで面倒を見てくれるのか。」と尋ねると、マスターは「お前は昔の俺みたいなんだよ。」と言って年季の入った顔をくしゃっと歪めて笑った。

マスターは今回の件を知ったら、どうするだろうか。叱責する?呆れる?見放す?いや、マスターのことだ。きっと言葉にならないショックを受けて自分を責めるだろう。いっそ、酷い言葉で罵って縁を切られた方がマシだ、と思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る