第7話

突然の展開に、健斗は頭の整理ができなかった。

「ただし。」貴婦人の低い声が響く。

「あなたが逃げ出した場合、私は警察に被害届を出します。」

「それじゃあ…」今差し出されるのと同じじゃないか、と健斗が言おうとしたのを察したように、貴婦人は言葉を被せた。

「2年後。2年後に、被害届を出します。」

一体何をしたいのか、貴婦人の思惑が理解できず、健斗は呆気に取られた。

「何もわかってないようね。つまり、あなたは選べるということよ。」

「選べる…?」

「逃げるか、逃げないかを。」

『今すぐに逃げたい』それが本音だった。

「逃げなかった場合は…?」

「警察には連絡しないわ。何をするかは、その時になったら教えてあげる。でも覚悟しなさい、決して楽なものではないわよ。」

貴婦人はこの状況を楽しんでいるかのように、不気味な笑顔を浮かべた。

「あなたが自分のしたことと今しっかり向き合うか、見ないようにして未来の自分に責任転嫁するか、という選択よ。1時間しっかり考えなさい。」そう言うと、貴婦人と兵士は物置きから言葉通りいなくなった。

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