第6話

「あら。反抗する元気は残ってるようね。」貴婦人はそう言うと、目の前で粉々に割れているマグカップだった物体に目をやった。その視線に合わせて、健斗も粉々の物体を見つめた。

「ねえ、これ、いくらすると思う?」

「ええと、、、。」

健斗は辺りを見回して、他の陶器品にめをやった。高級そうな物ばかりだ。暗がりで見た時よりも、より高貴な輝きを放ったものばかりが飾られていることがわかる。

「これはね、この中で1番価値ある物なのよ。」

「この中で1番…。」

きっと想像を絶する値段なのだろう。

「教えてあげましょうか?」

「いや、大丈夫です。」

値段を知ったら正気を保っていられるとは思えなかった。

「さあ、あなたこれからどうする?」

「どうするって、あんたの言うことに従うしかないだろ、動けないし。」

貴婦人が顎で兵士に指示を出す。すると、兵士は掴んでいた健斗の腕をパッと離し、貴婦人の後ろへ移動した。

「今から1時間、時間をあげましょう。

私達は1時間だけ、この部屋から立ち去ります。あなたがどこへ行こうと自由です。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る