第2話 「硝子の世界」
世界には様々な色がある。
そして色がある事を教えられていないのに、それは当たり前の風景として私達は知っている。
色から産み出されるイメージは人々にも深く関わり、その生活を豊かな物にする為のアクセントなっていた。
赤い色は暖かな印象や情熱的な世界を作り出す。
青い色は冷たい涼しげな印象や落ち着いた世界を作り出す。
緑色は生き生きとし風が駆け巡る印象や生命の息吹を感じる世界を作り出す。
透明でさえ色であり、何処か割れてしまいそうなイメージの世界を作り出す。
そしてそれらの色達が混ざり合い、形を作り、一つのものになっていく。
しかしそんな世界に色を知らない硝子がいた。
その硝子は小さな町の硝子細工の職人の家で生まれた。その時から硝子は色を知らず、きっと色を忘れて生まれたのだろうと言われていた。
色が無ければ、知らなければ。それはそれで何とかなる。
だけど周りの子が次々と新しい家族を見つけていく中、その硝子は一人だった。
随分と時が経ち、ある一人の深い青色の目をした青年がその硝子を見付け一目惚れをした。細く小さく触れば壊れてしまいそうなのに、芯は強く何より見るたび見るたび沢山の表情を見せてくれた。
青年は硝子の手を取ると、硝子細工職人にその硝子と一緒にいたい事を話した。更に色を知らない硝子に色をあげたい事も話した。硝子細工職人は驚き、最初は断っていたものの青年の熱意に負け、大切にしてきた硝子を託してくれた。
青年は硝子に色をあげるため、自身の深い青色の目の一つを硝子に移した。
次に硝子が目を開いた時、そこには様々な色の広がる世界が広がっていた。
初めて見る硝子細工職人の父の顔。
初めて見る父の作った硝子細工の数々。
初めて見る硝子に色をくれた大切な青年の顔。
硝子の黒い世界は、硝子が割れるように明るい色の映える光によって色づいた。
世界はステンドグラスのように輝き、硝子の目にはこの世の中に光が満ちていることを知った。
これは
了
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