3話〜小さな希望〜

俺はオカマ研究部という謎めいた部活に入ってしまったがために、入学早々から、全校生徒に引かれてしまった。もちろん、俺と同じくオカマ研究部に入部した()ミゲルも同じく、全員から無視されてしまっていた。なぜか、彼らとは話してはいけないという暗黙のルールができてしまったそうで、女子どころか、男子のクラスメートまでもが俺たちと話すことを拒んでいた。


入学から2週間が過ぎ、ミゲルもすっかりと異常な学校生活にも慣れてきた頃、俺にある転機がやってきた。


俺のクラス、1年2組が歴史の授業を受けている際に、俺は消しゴムを落としてしまった。全く転機とは思えないだろうが、まさかの事態が発生した。


俺の親がやっている桜花神社はホームステイだけに止まらず、神社の改修工事の費用を稼ぐために、桜花神社のグッズもたくさん出していた。しかし、それらのグッズは全く売れなかったため、俺がそれらを全て使っていた。桜花神社と書かれている鉛筆やシャーペンも全て俺が使っていた。もちろん、落とした消しゴムも桜花神社の出している桜花消しゴムだ。希望小売価格は500円。当たり前だが、そんな値段の消しゴムを買う人なんていない。


消しゴムを落としても誰も反応しないほどに、俺はみんなから無視されていたので、もちろん自分で拾おうとした。すると、隣に座っていたすでにクラスの人気者となっていた美玲みれいちゃんが俺の消しゴムを拾おうとしてきた。だがしかし、ここで彼女が仮に俺みたいな嫌われ者の消しゴムなんか拾ってしまったら、きっと彼女も嫌われてしまうかもしれないと思い、俺は瞬時に消しゴムを広い、安堵した。


歴史の授業が終わり、昼休みのベルがなった。すると、隣から「ねえねえ。」と声が聞こえた。隣をみると、それはなんと先ほど優しくも消しゴムを拾おうとしてくれた美玲ちゃんだった。


「ん、あ、ああ、ど、どうしたの、」


全くうまく喋れなかった。当たり前だ。女子とは話したことがないからだ。


「さっきの消しゴムってもしかして桜花神社のやつ?」


「え。なんでし、知ってるの。。」


可愛らしい筆箱から彼女は、『桜花神社』と書かれた消しゴムを俺に見せてきた。


「私も持ってるの。お揃いだね。」


笑いながら、そう言う彼女を見て、かわいいーと思ったが、それよりもなぜうちの消しゴムを持っているのかが不思議でたまらなかった。


「え。そ、それって500円のやつだよね。」


「ううん、税込で550円だったよ。」


美玲ちゃんの話を聞くには、彼女は神社の御朱印集めが趣味だそうで、それであの高い桜花神社消しゴムを持っていたらしい。


「もしかして、明臣くんも御朱印集めとかしてるの?」


「い、いや。うちは神社だからこれ持ってるだけで、」


「え!すごい羨ましい!!いいなー、私も神社生まれがよかった。」


彼女の包容力のせいか、なぜかうまく会話が弾み、昼休みでご飯を食べる時間がなくなってしまうほど、彼女との会話に夢中になっていた。昼休みの終わりを知らせるベルと共に彼女はこう言ってくれた。


「明臣くんと話すの楽しかった!あ、そうだ!今週の土曜日、ちょっと遠くにある鷹見奈神社に行く予定なんだけど、もしよかったら一緒に行こうよ!」


えーまじか。俺、今が人生のピークかもしれない。あ、でも土曜日ってミゲルとホラー映画観に行く約束だっけ。まあいっかミゲルなんか。


「うん!ぜ、全然ありがたき幸せ。。」


「ん?ありがたき幸せ?まあよくわかんないけど、じゃあ土曜よろしくね〜!」


これはもしやのおなごとのデート?人生まじ最高だわ〜。オカ研なんか入って人生終わりだと思ってたけど、美玲ちゃんが?いれば?なんも?問題なし?って感じ?


浮かれた顔で、ずっと過ごしていたら、隣に座っていたミゲルがこっちを見てきて、


「ヘンタイ、ハッケン。」


と俺のことを変態呼ばわりしてきたので、クラスのみんなから少し注目された。


授業が終わり、オカ研の部室に向かっている最中、ミゲルがまたこっちをじーっと見てきた。


「オイ、ナニバカナカオシテル。キモイオマエ。」と暴言を吐かれたので、日本文化と称して空手チョップを彼の脳天に食らわせた。なぜか、これが日本文化なのか、と喜ぶミゲルを逆に変態と呼んでいると、部室に着いた。


「うふふ、なんでそんな変態的な目をしてるのよ、明臣ちゃん。」


オカ研部長のシンデレラがそう言ってきたので、やっと自分の浮かれている顔に気づいた。


「いや、何もないです。」


「ウソツキ、オマエ。オナゴサソワレタ、コイツ。」


「んー、何よそれ。気になるわね。何が起きたのよ、明臣ちゃん。素直に言いなさい。言うまで、帰さないわよ。」


シンデレラがしつこく言うので、仕方なく今日あった出来事を説明し、ついでに初デートを成功させる方法をオカマたちに聞いてみた。


「アケオミ、ウブ。」


「黙れ、ボケミゲル。」


「仕方ないわね。あたし達がデート必勝法を伝授しましょう。いいわね、みんな?」


「いいんだっちゅうの〜!」


みんなが言った。そんな余計なことは正直してほしくなかったが、逆らったら何かされそうだったので、とりあえずオカマたちの言うことを聞くことにした。

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