天象儀潤む目いとし春の星

※てんしょうぎ うるむめいとし はるのほし


「この間見つけた星も見られるんだよね」

「うん、次に見たい星も見られるよ。大曲線の終点、からす座。あ、始まる。大丈夫?」

「……静かにできるよ? 外じゃないんだから」

「そうだね」


へんなことを聞いてしまった。

大丈夫じゃないのは、僕の方。


いつもの星空よりも、君が近いから。


座席から手を伸ばしたら、すぐそばに君がいて。



「今度は、プラネタリウムに行かない?」

「プラネタリウム? 嬉しいけど、本物の星をもっと見たいな。大曲線、まだ全部見てないし」


そう言った、君。


それならすぐに行こう、と誘いたかったけど。


最近、花冷え? なのかな。寒いんだよ。

僕は寒くてもいいけど、君には寒い思いをさせたくないんだ。


……そうだ。


「この間見た星たちと、その続きを見に行こうよ。大曲線が見られるから」

「あ、星座の予習と復習? 行きたい!」



そんな感じで、僕達は今、プラネタリウムで春の星を見ている。


二人で見た、北斗七星から探した春の大曲線。


二人で見た、春の北斗七星、うしかい座の一等星アークトゥルス、おとめ座の一等星スピカ。


そして、次に見たい星座、大曲線の最後の星座、からす座。

四つの三等星が台形になっているんだ。

君はちゃんと、調べてくれていたね。

本当は、色々説明したかったのだけれど。


……春の星は潤んだ星、なんて言われることもあるらしい。


だけど、プラネタリウムの星を、目を輝かせて見る君の目は、かわいくて、そして、少しだけ濡れていて。


星よりも、きれいかも知れない。



※いとし、はいと、といとしを掛けております。

副詞のいと、は程度がかけはなれていること。

いとし、は本句ではかわいい、の意味で用いております。

いと、いとし。どちらも古語です。


季語は、春の星。

潤んだように見える春の星のことだそうです。


天象儀は、プラネタリウムのことです。


※前句につきまして、春の大曲線の最終点の訂正をしております。

星についての知識が乏しく、たいへんに失礼をいたしました。

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