隣いて僕はうつるか船星と

※となりいて ぼくはうつるか ふなぼしと


「あ、本当だ、オレンジ色の明るい星!」


星空を仰ぐ君。


空には、おおぐま座の一部、北斗七星からつながる、春の大曲線。


北斗七星には、ぎゅっと握れそうなところがある。

だから、ひしゃくとか、鍋とか、スプーンとか。持ち手みたいなところから他の星を探してみたら、と伝えたら。


君は、オレンジ色の明るい星を見つけた。


「そう、あの星の名前はね、うしかい座の一等星、アークトゥルス」


「うしかい座、アークトゥルス……」


多分、頑張って覚えようとしてくれているんだ。


寒くないかな。

できたら、もう一つ、星を見つけてほしい。


でも、無理はしないで。


「ええと、次は……なんだか青くて、白い?」

あ。


「乙女座の一等星、スピカだよ。見つけたね!」

君は、見つけた、見つけてくれた。


「うん、ありがとう!」 

ありがとう、は僕が言いたい言葉だよ。


「星を見るのは好きだけど、星の名前とかはよく分からないんだよね」


正直に、そう言った君。


星がなんとなく好きだという君と、星がかなり好きで、少しは詳しい僕。


星つながりの、友達同士だ。


「良かったら、北斗七星と春の大曲線を見てみよう」

天気予報を何度も確認してから、誘ってみた。


そうしたら、こうして、喜んでくれた。春の夜の寒さも楽しんでくれているみたい。


……隣にいる僕も、君の目に映っているかな。

ほんの少しで、いいんだ。


あの船星、北斗七星とか、そこからまた探せる色々な星達を、きらきらとした目で見ている、君のその目に。


そして、よければ、僕のことも。


星達のように、移るところがあればいいな。


そう、君の、心のどこかに。



※うつる、には映る、と移る、を掛けています。

季語は、船星。春の北斗七星の別名です。

ひしゃくにあたる部分が上向きのため、船に見えるためらしいです。



春北斗、船星、北斗七星の春の大曲線。

二人で見られましたね。

大曲線の星座はあと一つ、残っています。

そして、春に見られるお星様はまだあります。


……たまには、プラネタリウムもいいかな。


僕は、そんなことも思っているみたいです。

一人だったら、本物を見るのが当たり前、なのに、です。

大曲線の最後の星座。先にプラネタリウムで見るのかな。

もちろん、二人で。


※前句の続き、別視点でございます。

こちらからお読み頂いておりましたら、もしもよろしければ前句もご確認頂ければと存じます。


また、前句の解説文でうしかい座の一等星アークトゥルスをアートゥルスとしておりました。

訂正をいたしました。たいへんに失礼をいたしました。






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