21 ご褒美
スポーツ大会を終えた誠たちはクラスで打ち上げにきていた。
「みんな!今日はおつかれさん!」
蓮が場を仕切る
「「「おつかれさまー!」」」
「今日はがんばったご褒美としてカラオケで騒ぎまくるぞ~!」
「「「おー!」」」
クラスの大半が参加している打ち上げ。もちろん華恋も参加している。
(やっぱり帰りたい……)
打ち上げに参加する気はなかった誠だったが、蓮やクラスメイトたちに執拗に誘われ、誠が折れる形になって参加した。
(みんな盛り上がってるな~)
たまたま席が隣になった華恋が小さな声で話しかけてくる。
「誠さん顔に出てますよ」
話しかけてくると思っていなかった誠は驚く。
「あ、ああすまん」
いえいえ と笑う華恋。
その後もカラオケは盛り上がっていた。
すると蓮が
「男子のサッカーは誠のお陰だよな〜!今日の主役がこんなに静かだと盛り上がりに欠けるよなお前ら~!」
「そーだそーだ!」
と蓮がニヤニヤしながら誠に振ってきた。
「あ、いや……」
「ほらほら歌えよ結城~」
クラスメイトも好奇の目で誠をみる。
誠は勢いに負けて一曲歌うことになった。
「~~~🎶」
歌い終わった誠は周りを見渡すと、クラスメイト達は固まっていた。
「お、お前歌も上手いのかよ!」
と蓮が驚きの声を上げる。するとクラスメイトも立て続いて様々な声が飛び交い、その後も誠はカラオケに積極的に参加したのであった。
帰宅したあと、華恋は夕食を作る準備を始めた。
「華恋、今日は無理しなくていいんだぞ」
「いえ、体に支障はないので大丈夫です。それに作りたいので」
と言われて誠は黙ることしかできなかった。
食事を終えた二人はソファーでくつろいでいた。
「今日の誠さん凄かったですね。かっこよかったですよ」
と不意に褒められ誠は恥ずかしがる。
「……べつにこれくらいはできる」
「歌もお上手でしたね」
「……ありがとう」
すると華恋はニヤニヤしながら
「照れているんですか?」
と顔を覗き込んできた。
「っ!ば、ばか!ちげぇよ……」
「ふーんそうですか」
華恋は誠を揶揄う様に空返事をした。
褒められたり、からかわれたりしていたたまれなくなった誠は足早にお風呂場に向かう。
「今日はもうお風呂はいるから……先に帰っていていいよ」
「はいわかりました」
お風呂を終えた誠はリビングに残っていた華恋の姿を見て驚いた。
「……なんでまだ残っているんだ?」
「ドライヤーで髪を乾かしてあげようと思いまして……ご褒美ですよ」
「……いらない……」
「ほんとにいいんですか?ほらこっちきてください」
と自分の前のスペースをトントンと叩く。
誠ははぁ とため息をつきそこに座る。
髪を乾かしはじめた華恋に対して言葉をかける。
「こんな事していると「カップル」みたいだな」
その言葉を聞いても華恋は動揺しない。
「そうですね。わかっていてされるがままですか?誠さん」
「っ!……そういえば誠さんじゃなくて誠くんって呼んでくれ」
「どうしてですか?」
「さん付けはなんか慣れない」
「そうですか。わかりました誠くん」
髪を乾かし終えた華恋は帰宅する。
「今日はお疲れ様でした。その……かっこよかったです」
俯きながら言う華恋の姿はとても可愛かった。
「あ、ありがとう。ま、また明日なおやすみ」
と早く切り上げて誠はリビングに戻る。
(鼓動がうるさい……)
改めてスポーツ大会は幕を閉じたのであった。
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