17 華恋の過去

誠と華恋そして真由美の三人はデパートに買い物に来ていた。


(めっちゃ視線感じるなあ……)

華恋はもちろん、真由美も30代には見えない容姿をしているため周りからの視線を集めている。


「今日は女性の買い物に付き合ってもらうわよ!誠!」


「え?買い物?」


「そうよ!華恋ちゃんも誠に着いてきて欲しいでしょ?」


「そうですね。感想お願いしますね」


華恋は何故か乗り気になっている。


「まあいいけど……」

(可愛い一ノ瀬さん見れるかもだし……)




オシャレな服屋にて華恋は服を試着している。

「ど、どうでしょう……?」


恥ずかしがりながら感想を求める華恋。


(や、やばいな……想像以上だ……)


華恋は先程まで白のワンピースを着ていたが、今はボーイッシュな服をきている。上はダボっどしたスウェットを、下は短いズボンを履いている。そして帽子を被っていた。


「わあ……華恋ちゃんめちゃくちゃ可愛いわ~」


褒められた華恋は恥ずかしそうにしている。


「ありがとうございます……ど、どうですか?誠さん」


「す、すごく似合っているよ」


「は、はい……」


その光景を眺めていた真由美は

「甘い雰囲気だわ~」

と言葉を漏らした。


その後も華恋や真由美が試着を繰り返した。


「お、おわった……」


そう。誠は女性の買い物を甘く見すぎていたのである。

時間にして約3時間程誠は二人の買い物に付き合わされたのであった。



「いや~!今日はたのしかったわ~」


「私も楽しかったです。それよりいいのですか?こんなに服を買ってもらって……」


「いいのよ!いつも誠にご飯作ってくれているお礼だと思ってちょうだい」


「ありがとうございます」


「あ、あの誠さんも付き合ってくれてありがとうございました」


「全然大丈夫。楽しかったよ」


(可愛い一ノ瀬さん見れたし……)


「あ、私寄るところあるから二人で先に帰っててくれる?今日は私がご飯作るから華恋ちゃんも誠の部屋にいてね」


「わ、わかりました。お世話になります」


「いいのよ~!なら私行ってくるわね」


そう言い残して真由美はどこかに行ってしまった。


「なら帰ろっか華恋」


「はい!」



帰り道の途中、華恋は口を開いた。


「今日はほんとにありがとうございました」


「俺も楽しかったよ」


そして一ノ瀬の顔が少し曇る。


「私……こうして出かけるの久しぶりなんです。小さい頃はよく親と出かけていました」


でも と続ける。

「小学生3年生の時に両親を事故で亡くしました……それでわたしは母の妹のところで暮らすことになりました。でも叔母さんは私のことを嫌いました。よく小言を言われました。叔母さんの旦那さんもそうです。新しい家族は冷たくて同じところに住んでいるだけの他人でした。」


あまりの告白に誠は黙ってしまう。


「……だから高校からは一人暮らしを始めました。以前に誠さんが言いましたよね。友達との間に壁があるように見えるって。あの時、私は驚きました。誠さんの言う通り友達との間に壁を作ってきました。」


「……そうなのか。理由聞いてもいいか?」


「はい。もちろんです。私は小学生の時からの親友がいました。両親を亡くした時にその子は支えてくれました。でも中学生になったある日、その親友だった子の好きな人が私に告白をしてきました」


(親友だった……?)


「その親友は私が告白されて以降、執拗に嫌がらせをしてきました。あんなに傍にいてくれた子が傍から離れていき、そして嫌がらせをしてきた時、私は家族と上手くいってない事もあり、すごく落ち込んでしまって私の居場所がなくなった気がしました」


一ノ瀬の表情はすごく暗い。


「だから高校生になった今は裏切られても大丈夫なように友人との間に壁を作り、恋愛には興味がないことを周りに示して上手く人付き合いをしてきました……すみません。長々と」


「いや華恋は今までよく頑張ってきたと思う。当時、辛い時に逃げ出さなかったのは凄いと思うよ」


誠は過去の自分と重ねて言葉をかける。


「俺にできることはあまりないかもしれない。……でも華恋の傍にいることはできるし、母さんもいてくれる。だからさ……これからは辛いことがあったら俺に頼ってほしい。俺は裏切ったりしないから」


その言葉を聞いた一ノ瀬は目に涙を溜める。


「……その言葉、信じますよ……?」


「ああ。信じてくれ」


「……ありがとうございます」


「ああ。これからもよろしくな華恋」


「はい。よろしくお願いしますね。誠さん」


華恋は笑顔ではにかんだ。




二人は先程より少し近づいて帰って行った。








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いつもより少し長くなってしまいました💦

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