13 片鱗
買い物から帰宅した結城は疲れ果てていた。
ピンポーン
(一ノ瀬さんか……)
「お邪魔しますね。結城さん」
「ああ上がってくれ」
一ノ瀬はキッチンへと向かい、料理を始めた。
今日のご飯はオムライスか
うん。美味そう
「今日も美味そうだな。ありがとう」
「いえいえ気にしないでください。さあ冷めないうち食べましょうか」
「ああ。いただきます」
「いただきます」
食事が一段落した時
一ノ瀬さんが口を開いた。
「今日のご飯お口にあいませんでしたか?」
「え?いやおいしいよ。さっきからおいしいって伝えてたんだけど……」
結城は困惑した表情をする。
「いえ……今日の結城さんはなんだか機嫌が悪いように感じたのでもしかしたらご飯がお口に合わなかったかなと……」
(ああそゆことか……)
「ごめん顔に出てた?」
「はい。今日はいつもより少し険しい顔してましたよ」
「ああ……実は今日この髪型で買い物行ってたんだけど、その時に蓮たちと会って色々とな……」
「ああ綾瀬さんですか。その髪型で外を歩いたんですね」
「ああ。デパートは人も多いし髪が長かったら変な目で見られるからな」
(実際変な目で見られることはなかったけど相当疲れた……)
「でもその髪型でもだいぶ目立ったのでは?」
「ああ……そうだな」
「結城さんのお顔は整っていますからね」
(急にそんなこというなよ……びっくりするだろ……)
「……ああそうだな。でも一ノ瀬さんはいつも目立ってるのでは?美人だし」
結城はやり返しの意味も込めて言った。
「そうですね。でも私は外見だけで人を判断することに関しては理解できないんですよね。今まで告白してきた人はだいたい一目惚れしましたって言われて、よく外見だけで判断できるな。と……あ、すみません」
だが照れているそぶりはなかった。
「いやいいよ。おれもその気持ちわかる。一ノ瀬さんと同じ考え方だ」
「そうですか?それはよかったです」
(そういえば来週ゴールデンウィークがあるな)
「一ノ瀬さん来週のゴールデンウィークの事なんだけど、母さんがここにくるらしいからゴールデンウィーク中はご飯作らなくて大丈夫」
「そうですか。結城さんはご家族とは仲がよろしいのですか?」
そう聞いてくる一ノ瀬の顔は心なしか暗い気がする。
「そうだな……仲はいいんじゃないか?」
「そうですか。いいですねそういうの……」
一ノ瀬の目には憧れの気持ちが写っている気がした。
(ここで一ノ瀬さんに家族と仲がいいのか聞いてはいけないよな……そんな気がする)
「ゴールデンウィークの前日はご飯作りますね」
「ああ。いつもありがとうほんとに」
「いえ。好きでやってるので」
「では私は失礼しますね。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
一ノ瀬は自分の部屋に帰って行った。
(一ノ瀬さんの家庭事情気になるなあ……)
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