第5話 by available

溝渕は龍馬の旧友であり、数少ない良き理解者でもあった。前日に起きた飛び降り事件について何か助言をもらえないかと濱渕のもとを訪れたのだ。ひとしきりお互いの身の上話を済ませた後、龍馬は覚悟を決めて言った。

「実は、死人が出た場面に出くわしたんだ。 …酷い有様だった。急だとは思うが君にいくつか助言を求めたい」

「…分かった。ここじゃあなんだ、中で話を聞こう」

「かたじけない」

彼は龍馬の眉間にしわが寄った顔をみて素早く自宅へ促した。荘厳な大屋敷は庭まで手入れが行き届いており、美しい景色が龍馬の心を落ち着かせた。龍馬は少し故郷が恋しくなる。

中に入ると部屋はかなり整頓されており、ふとツンとしたにおいを感じた。そして通された座敷に入ると聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「あっ!この前の…お団子食べてくれたお兄さん?」

そこには茶屋の娘、久留島詩乃がいた。困惑していたら詩乃はこれまでの経緯を話し出した。どうやら彼女はしばらく避難のため溝渕の家に預けられたらしい。しかし、なぜ彼の家に?と思った矢先、溝渕が茶をもってやってきた。

「ははは。縁に恵まれてな。今、彼女の母親と交際させてもらっているんだ」

意外な繋がりに龍馬は驚愕しつつもここに来た本来の目的を思い出し、事の顛末を伝え、そして龍馬は本題を切り出した。

「この死に方、俺は自殺じゃないと見込んでいる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る