第4話 余計なお世話

 清美の妹は、遠足の話をしてくれた。

 山の上に田んぼがあり、メダカやドジョウが泳いでいたこと。小さな白鷺しらさぎのような花をつけた草があったこと。土の中に、はちの巣があって、何人かが刺されたことなども報告した。


 サギソウに感動している妹が、清美の目に浮かんだ。蜂の巣の話には驚いた。妹たちは逃げ惑ったことだろう。

「お姉ちゃん! お弁当ありがとう。卵焼きおいしかった」

 妹は台所に行って、弁当箱を洗い始めた。


 いつになく、権蔵爺さんが隆の家にやってきた。

(何ぞイヤなこと言いにきたな)

 隆には分かった。

「千足もしばらく治安がよかったけんど、また、盗人ぬすっとが出とるようやなあ」

 爺さんは隆の父親に話しかけているが、隆を意識しているのは明らかだった。


「今朝、敏夫んとこの卵が盗まれたんやって。隆。誰ぞいつもと変わった様子の者はおらんかったか」

 権蔵爺さんは隆を見た。

「悪いのと付き合うたらいかん。ワシはお前のこと心配やから、言うてやっとるのやで」


 隆は清美の髪の毛に、蜘蛛の巣がついていたことを思い出した。みっともないので注意してやりたかったが、言いそびれていた。

 清美の家は敏夫さんの家の近くだから、通ることはある。もし、敏夫さんの庭かどこかで蜘蛛の巣を付けたと仮定して、そんなに朝早く、何のために行ったのだろう。

 隆はいろいろなケースを想定した。


 翌日、清美を注意深く観察した。蜘蛛の巣は取り除かれていた。いつものように、和子と談笑していた。

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