第7話絵画を盗み出せ!⑤

 奇跡というか、まぐれと言うべきか……とにかく、成金邸の最新型電子ロックを破る事に成功したチャリパイの四人。


「じゃあ、早速中に入りましょう」


「ちょっと待って、コブちゃん!」


我先に屋敷の中へと足を踏み入れようとする子豚を、シチローが制止した。


「廊下はヤバイ! 見てよ、至る所に監視カメラが仕掛けてあるだろ」


シチローに言われて廊下の天井を見上げると、そこには5メートルおきに監視カメラが設置されている。確かに廊下を通れば姿は丸見え、すぐに警備員が駆けつけて来るだろう。


「でもシチロー、廊下通らなきゃ絵のある部屋まで行けないよ……」


「いや、方法はあるよ」


シチローが言うとは、はたしてどんな方法だろうか?


「なんか、いやな予感がするわ……」


ていーだの直感はおおよそ正しい。大体にして、シチローの考える作戦やアイデアはすんなり上手くいった試しが無いのだ。



☆☆☆



成金邸の『天井裏』を、這うように進む怪しい影が四つ……



その一つは天下の大泥棒、『ルパン三世』。二つ目、三つ目は『キャッツ☆アイ』。




そして、


「しつこい!!」



 やがて、チャリパイの四人は、【仔犬を抱いた少女】が飾られている部屋の上に辿り着いた。先頭のシチローが後ろを振り向いて、残りの三人にこの先の注意を呼び掛けた。


「それじゃ、これから下に降りるぞ! 屋敷内には大勢の警備員がいるはずだ。

くれぐれもように!」


シチローの言葉に、てぃーだ達は無言で頷いて了解の意思を示す。それを確認するとシチローは、まず自分が手本を見せるように一番手で颯爽さっそうと天井裏から飛び降りたのだが……


「うわっ!」


大理石の床に着地した途端にに足を滑らせ、思い切り床に尻餅を着いた。


ズデ―――ン!


「なんだよ! このツルツルの床はっ!」


「その床、私達がメイドに行った時におきました!」


てぃーだ、子豚、ひろきの三人が満面の笑顔で声を揃えて答えた。


「余計な事を……」


その後、シチローは天井裏の穴の真下にソファを移動させ後の三人を安全に部屋へと降ろす。

ちょうどその時だった。屋敷の廊下の方から警備員らしき誰かがこちらに近づいて来る靴音が聞こえてきた。


「シッ! ……誰か来たみたいよ……」


「ヤバイ! みんな隠れるんだ!」


コツコツと屋敷内に響く靴音……そして、部屋から見える廊下側の窓からは警備員の懐中電灯の灯が漏れていた。


チャリパイの四人は急いでソファを元の位置に戻し、その影に隠れて息を殺していた。


「………………」


警備員は部屋のドアを開けて、おもむろに中を覗き込んだ。その際、何か気配でも感じたのか懐中電灯でぐるりと部屋を照らしながら、問いかけた。


「おい! そこに誰かいるのか!」


「!!!!!」


(マズイ……)









「ブヒッ……ブヒッ……」


(コブちゃん!)








「なんだ、ブタか……驚かせやがって……」


そう言い残し、警備員はドアを閉め立ち去っていった。



「助かったわ……」


「ここの警備員って、アホなのか……」





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