第4話絵画を盗み出せ!①

都会の闇夜にうごめく影が四つ……


天下の大泥棒、ルパン三世にキャッツ☆アイ……


そして……




『ねずみ小僧じろきち』!



子豚なのに……



『ねずみ小僧じろきち』!



令和なのに……


「うるさぁ~い!入れるなぁ~!」


子豚が、ナレーションに思い切り突っ込んだ。



☆☆☆



 東京都世田谷区田園調布『成田邸』……シチロー達は、その広大な敷地を囲う高さおよそ3メートルの塀を見上げていた。


成金邸に忍び込む為には、手始めにこの高い塀を乗り越えて敷地の中に入らなければならない。シチローは、かぎ爪の付いたロープの先を投げて塀の縁に引っ掛けるとそれを二回程引っ張って確かめながら言った。


「こう見ると結構高いな……オイラ達は大丈夫だとしても、コブちゃんにはちょっとキツイかな」


まずは、このロープを使って塀を登る順番をシチローが決める。


「最初はオイラが登るから、次がティダ、間にコブちゃんを挟んで最後がひろきの順番で行こう」


当初の予定通り、シチローとてぃーだは問題なく登れたが、やはりちょっぴり重めの子豚には3メートルの塀はかなりキツそうだった。


「ヒィ~~! 早く引っ張ってよぉ~!」


「頑張ってコブちゃん! あと少しよ!」


「あと30センチだ! 頑張れコブちゃん!」


「ムキィィィィィィィィ~~!」






「よ~し、よく頑張ったぞコブちゃん」


まるでフルマラソンでも走った後のように、すっかりヘトヘトになっていた子豚をシチローとてぃーだの二人が労う。これで三人。残りはひろきだけの筈だが……気が付くと、塀の外にいるはずのひろきの姿が見えない。


「あれ、ひろきはどこに行ったんだ?」


「さっきまでいた筈よね……」


「お~~い! ひろき~~!」


不思議に思いながら、三人で声を合わせてひろきの名前を呼んでみる。すると、その返事は思わぬ所から聞こえてきた。


「みんな、何やってんの? 早く降りてきなよ」


ひろきがいたのは、成金邸の敷地の中だった。どうして順番が最後のひろきがシチロー達より先に降りているのか、三人にはその理由がさっぱり解らなかった。


「ゲッ! なんでアンタがそこにいるのよ!」


「どっから入ってきたんだ!」


「まさかがあるとか!」






「だって、よ……ほら、あそこ……」


「え・・・・・・」


ひろきが指差した先の正門は、既に全開になっていた。


「それ、もっと早く教えてよね……」


肩で息をしながら子豚が呟いた。



☆☆☆




 成金邸の庭は広い。塀から建物まではおよそ百メートルの芝生が続き、防犯の為の赤外線レーダーやカメラが多数設置されていた。


この庭を横断する為、シチローは前もって考えていたアイデアを皆に説明する。


「さっきオイラが調べたら、赤外線レーダーの高さは80㎝だった。だから、を付けて匍匐前進ほふくぜんしんで建物まで行くぞ」


シチローが『これ』と言って皆に配ったのは、緑色のマントだ。芝生の庭で緑色は保護色となり、カメラの映像ではチャリパイは存在していないように見えるのだ。


チャリパイは、縦一列になって百メートルはある成金邸の庭を匍匐前進でゆっくりと進んでいく。その、あまりに遅い進みに思わず子豚の口から愚痴が飛び出す。


「こんなので朝までに着くのかしら……わ……」


「緑色だしね……折角のコスチュームは全然役に立ってないし」



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