第3話忍び込み大作戦

森永探偵事務所では、シチローが偵察に出た三人の帰りを待っていた。


「6時か…そろそろ帰ってきてもいい頃だな…」


テーブルに置かれたマルボロボックスから一本を取り出すと、口にくわえてジッポーで火を点ける。その動作とほぼ同時に、三人の戻る声が聴こえた。


「ただいま~」

「ご苦労様、で…どうだった?成金邸は…」

だったよ…シチロー」

「えっ?…いや、防犯設備はどうだったって聞いたんだけど…」

「ああ…そっちの話ね…」


三人共、よほど昼飯が牛丼だった事がショックだったらしい。そんな中でも独自に成金邸の偵察をしていたてぃーだは、スマートフォンで撮影したいくつかの写真をシチローに見せながら説明を始めた。


「セキュリティーは大した物だったわ…防犯カメラに指紋認証、赤外線レーダーに大勢の警備員…それに、庭の番犬もいたわ」


すると、子豚とひろきも負けじとスマホの写真を見せる。


「あと、もあったわ!」

「玄関にもあったよ!」

「それ関係あるのか?プールとか虎の敷き皮とか…」


てぃーだからの情報を基に、シチローは成金邸の見取り図を描き綿密な作戦を練る。


「ここからここまでかかる時間がこうだから…そして脱出経路がこうで…それから…」


およそ一時間をかけて、ただ一つの問題を除き…シチローは作戦を完成させた。



「いやあ~、問題は今回の作戦にを着て行くかだな…」


問題ってそんな事だったのか…



♢♢♢



そして、いよいよ作戦決行日の朝がやってきた。

シチローは、てぃーだ、子豚、ひろきの三人を集めて激を飛ばす。


「さあ、いよいよ今夜成金邸に忍び込んで『仔犬を抱いた少女』を盗み出すぞ!」


シチローは右手に何か包みのような物を抱え、左手を高々と挙げてチャリパイの士気を高めていた。


「ところでシチロー、その右手に持っている物は何なの?」

「ああ、これ?」


シチローが右手で抱えていたもの…それはシチローが今回の作戦の為に用意した重要なアイテムのひとつであった。


「これは、『仔犬を抱いた少女』のだよ。絵画を盗んだ事がバレないように、現場ではこの贋作と本物の絵をすり替えて来ようと思うんだ」


「確かに成金邸でこの絵画が盗まれた事が発覚すれば、すぐに屋敷中が大騒ぎになる事は間違いない…その発見を少しでも遅らせる事は、チャリパイのリスクを下げる材料になる。


「なるほど!さすがシチロー、考えたわね」

「シチローやるぅ~」


皆の称賛を浴びて気分を良くしたシチローは、更なる提案を持ち掛ける。


「それから、今回の作戦を遂行する為に特別にを用意したからみんなそれに着替えてみてよ」


「え?…コスチューム…?」


コスチュームと聞いて、てぃーだは眉をひそめたが、コスプレ大好きな子豚とひろきはまるでお祭りのように騒ぎ出した。


「どれどれ、どんなの買ってきたのシチロー!」

「一応、沿選んだつもりだけど」

「それじゃティダ、ひろき、早速試着するわよ!」

「やろう、やろう、コブちゃん!」


そして30分後…『第一回チャリパイコレクション・ファッションショー』が始まった。



♢♢♢



トップバッター、シチロー

新宿区、まごころ商店街にある『テ―ラ―赤山』のサブオーダーメイドによる真っ赤なジャケットで登場…


「やっぱり、『ドロボー』と言ったらルパン三世だろ。一度これをやってみたかったんだ」


続きまして、てぃーだとひろき

こちらはご存知歌舞伎町『ドン・キホーテ』で調達…


「女性の怪盗と言えばやっぱり『キャッツ☆アイ』しかないでしょ」


てぃーだが濃い紫のレオタード、そしてひろきはオレンジのレオタードでそれぞれ登場…しかし、キャッツ☆アイは三人の筈…どうして二人なのだろう?…その理由をシチローが説明した。


「いや、本当は三着揃えたかったんだけど、どうしてもコブちゃんのサイズが見つからなくて…だからコブちゃんには、沿別の衣装を着てもらう事にしたよ」


そんな訳で、このショーのトリを務めますのは…


江戸時代を一世風靡した大泥棒


「なんで私だけ『ねずみ小僧じろきち』なのよ…」


その子豚の様子を見たひろきが、笑顔で呟いた。


「『子豚』なのに『ねずみ小僧』だ」













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