本と春休み

図書局員の春休みは本の蔵書点検に追われる。

「何?蔵書点検って。 えっ仕事があるの? 部活なのに?そんなの聞いてないよ。」

「毎年やらなきゃいけないんです。 春休み中にやるからね。」

「え〜〜 まいっか。 どうせ春休みは暇だし。」

蔵書点検とは、図書室にある本がなくなっていないか、しっかりとコンピュータに登録されているかを確認するいちばん大変な作業だ。この南高校の図書室には全部で約20800冊ある。その一つ一つすべてを手作業でバーコードを読み取る。そして、違う本棚にあったら、それを本の本棚に入れ替える。

人海戦術でやるしかない。流石に雨谷さん一人にやらせるわけにも行かないので、こうして毎年図書局員が『部活の活動』という名目を着けて手伝っている。この図書室に、コンピュータは全部で2台ある。そして長い延長コードと、バーコードリーダーで延々とスキャンする作業を繰り返すのだ。

「もっといい方法ないかな?いちいちスキャンして確認するの大変すぎる。」

「パソコンを動かせたらいいけど無理だからね。」

「あ〜あ、いつまでかかるのかな?」

「今日はとりあえず12時までに一人500冊終わらせよう。」


「やっと終わった! お腹すいた。ご飯食べに行こうよ。」

「いいよ。 じゃあお疲れ様です。」

「はい、お疲れ様。ありがとうね。」

そうして、僕らは駅にあるハンバーガー屋に行った。

「はあしみる〜やっぱりコーラが一番。」

「今日でやっと10分の1か。あと9日で終わるな。」

「もう、やっと今日の分終わったのに、あと9日とか言わないでよ。せっかくの達成感が薄れちゃう。」

「やっぱり大変だな。中学の時は図書委員が一クラス一人絶対ににいたからもう少しマンパワーあったんだけどな。3人だとどうしても無理があるよな。」

「来年はたくさん入部してくれるといいよね。2年生は0人だったんでしょ。」

「次3人入ってこなかったら、まあなくなりはしないけど、生徒会からの塚集う日が減らされちゃう。なんとかしきゃな〜」

「一応局だけど同窓会より上の管轄なんでしょ。」

「そのはずだよ。前期が5人以下が2年続くと同窓会レベルになってしまう。今年がタイムリミットだし…」

「もしかしてあの研究会のお菓子とかって…」

「そう。部費から出ているよ。購入している本とかは学校図書のなんか別会計だけど、少し、自腹で購入する機会が増えるようになるな。」

「頑張って新入部員を増やさないとね。兼部も可能ですよ〜って」

「頑張るかぁ」

「じゃあまた明日ね。」

「うん、また明日。」

こんな感じに残りの9日間は過ぎていった。



「は〜あ。 なんか黎だけだとつまんない。 勉強もしなきゃいけないし…そうだ!蔵書点検も終わったし、他にも人を呼んで遊ぼう。」

「いいけど…僕あまり知っている人居ないよ。僕と遊んでくれる人なんて…」

「本当に?南校に居ないことは否定しないけど。他の高校には居るでしょ。」

「いや、ちっともフォローになっていないし。他の高校?」

「じゃ〜んこれ見て。」

「えっ林太郎くんとあと栞さんの連絡先!?」

「こないだの研究会のときに交換しておいたんんだ。グループ作るよ」

愛{ねえみんなで遊びに行かない?}

「どうだ!」

ピロン ブーブー

君は通知をONにしているが、僕はバイブレーションにしている。

「あっ返事が来た。」

{いいね 僕はいつでも暇だけど。 どこに行くの?}

「ねっ。みんなで遊びに行けるでしょ。 みんなって言っても4人だけど。」

僕はこんなふうに友達と遊びに行く約束をしたりするのは初めてだった。

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

栞{私もいいですよ。みんなと遊んでみたい!}

愛{じゃあどうする?}

林{博物館とかどう? 多分今源氏物語展やってるよ}

黎{あっ見たかったやつだ。}

愛{じゃあそうしよう! 今週の土曜日とか空いてる?}

栞{私は大丈夫だよ}

林{僕も}

黎{僕も}

愛{じゃあ土曜日の9時に光宮駅の変な像の前集合でいい?}

栞{わかりました!}

林{OK}

黎{了解}

「よしこれでOKっと。 よし、じゃあ遊びに行こう!」



そして土曜日、僕は初めてのことなので約束の30分前に着いてしまった。

「どうしよう。流石に早すぎる… そうだ走れ高校生の最新刊出てるかな」

そうして僕は駅の中にある本屋に行き、時間を潰してみんなと合流した。

「栞ちゃんかわい〜〜〜♡」

「愛菜ちゃんだっておしゃれだよ。」

何やらガールズトークが始まっている。

「この髪飾りかわいいねどこで買ったの?」

「北光宮駅の雑貨屋さんだよ。」

「そうなんだ。すごい!これ硝子でできているんだ!」

「そうなの」…

女子の話は大概長い

「まあ…行くか。」

「そうだね。速く見たいし。」

やっぱり林太郎くんは話しやすい。

「わぁなんか神秘的。」

今日行く博物館では源氏物語展と言って実際に源氏物語絵巻が展示されていた。平安時代に書かれたこの絵巻はその歴史がしっかりと感じられるくらい荘厳だった。

栞さんは何やら源氏物語の文字を読もうとしているらしい。

「かな文字読めるの?」

「うん。書道をやっていて、平安仮名なら何となく読めるよ。」

「ここらへんは桐壺じゃないかな。 あの最序盤のところね。」

「そうなんだ。すごいね。」

「一応書道部も兼部しているから。でもこんな字はなかなか書けないな。」

源氏物語絵巻の文字は僕には読めないが、なんか絵とも相まってとても芸術的だった。

「本当にすごいよね。1000年も前のものがこんなにきれいに残っているなんてね。」

「しかもいまでも日本だけじゃなくて海外でも愛されているからね。」

「時代を超えても愛され続けている作品。なんかいいね。」

「そうだね…」


そんなこんやでもうお昼も少し過ぎて2時くらいになっていた。

「ねえお昼どうする?」

「近くに軽食も食べれるカフェがあるよ。私1回行っていってみたかったんだ。」

「いいんじゃない。そうしよう。林太郎くんもいい?」

「いいよ。それに僕あまりガッツリ食べないほうだし。」

そうしてみんなで最近流行りだというカフェに行ってみた。

僕はめったに、いやまったくもってもんな感じのカフェに行ったことがなかったので

ここでもまた緊張した。今日は初めてのことばかりで緊張してばっかりだ。

「ねえどうする?私このケーキ食べたい!」

「私もそうしようかな。」

君と栞さんが選んだのは季節限定のケーキで何やらさくら味らしい。

「あとやっぱりメインはパスタかな。」

「ね」

二人はどうやらパスタとケーキのセットにするらしい。

「男子組はどうするの?」

「このチキンのハーブソテーにしてみようかな。」

「じゃあ僕もそうする。ケーキは…いいや」

「すみません。」

「はい。ご注文をお伺いします。」

「季節のケーキとパスタのセットを2つとチキンのハーブソテーを2つお願いします。」

「お飲み物をお伺いします。」

「あっじゃあ私はハーブティーで。」

「私は…アップルティー」

「僕はコーヒー」

「僕はアッサムティーでお願いします。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

僕はいつもどおりアッサムティーにした。倫太郎くんはコーヒーで大人っぽい。

「見事にみんなの飲み物バラバラだね。」

そんな事を話しながら楽しく食事をした。

「わああま〜〜い♡」

「美味しすぎる〜♡」

二人ともケーキをすごい勢いで食べている。

君の食べるスピードが本当に速すぎる。二人とも5分も経たないうちに規定に食べきってしまった。

「あ〜あ 美味しかった。」


そんな感じで今日は解散することにした。

「じゃあまた遊ぼうね。」

「バイバイ。」

帰り道、僕と君は同じ電車で揺られていた。

「今日はありがとう。こんなこと初めてですごい楽しかった。」

「よかった〜また行こうね。」

「うん。そうしよう。」

電車から見える川は桜が満開で、桜並木が出来ていた。春の遊佐氏が僕たちを真っ赤に染めていった。 もう少しで4月。僕たちは2年生になる。






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