図書室と魔のテスト

「はあ。やだよ〜〜〜〜 定期テスト嫌だよ〜〜〜〜」

今日から定期テスト1週間前。もう3月だ。南高校のテストは他の学校に比べて遅く、修了式の一週間前に行われる。

「なんでテストなんていうものがこの世に存在するの?」

「それは昔、中国の隋の時代での科挙っていう官僚の選抜試験が始まりらしいよ。」

「そんなことどうでもいいの。 ぷく〜」

君はふざけて怒っているようにした。

「あ〜あ、化学とか、英コミとかホント無理、化け物学と英ゴミ《・・》じゃん。」

「それは口に出したらだめなやつだよ。」

「いいもん。先生いないし。」

「まあ、そう言わすに英語は僕も得意じゃないけど化学なあら教えてあげれるよ。」

「本当に! ありがとう!理系図書局員!」

「はあ、」

テストまであと1週間先が思いやられる。



 放課後の図書室ほど勉強に適している場所はこの世にないと思う。特に一が少なければなおさらだ。

 テストは10教科、現国、言語、数学、英コミ、論表、化学、生物、地理、歴史、そして保健だ。この10教科を4日間でテストされる。

「何?この酸と塩基って。molmolmolmolmolmolmolmolmolmolmolmolmolmolmol 本当にうるさい。ねえ別にpH値なんて計算できなくてもいいよ。」

「いや、テストだから。 こんなのどうやってやるの?中和滴定なんて… 実験でやったけどフェノールフタレインが真っ赤になって失敗したし…」

「そういう時は、 これ。 図解・実験マニュアル!」

「なにそれ。」

「これには色々な実験の方法が写真なんかと一緒に載っているんだよ。中和滴定は。ち、のところだから…P374、開いてみて。」

「あっしっかりやり方が載ってる!」

「でしょ。こういうのを使って勉強をしているんだ。去年の受験のときも一人で図書室で勉強してたな…」

「ありがと」



 そんなこんやでテスト勉強をした。

「紅茶いる?」

「えっ紅茶淹れれるの?」

「うん。雨宮さんがポットを持ってて、『司書室にあるから使ってもいいよ。』って。ほらこないだの研究会の残りのティーパックもあるし、ティーカップもあるから。」

「えっ、黎の淹れた紅茶飲みたい!」

「アッサムとダージリンとアールグレイあるけどどうする?」

「えっそんなに種類あるの?わからない。どれが一番いい?」

「僕が一番好きなのはアッサムティーだよ。」

「じゃあそれで。」

「砂糖はどうする?」

「う〜ん、じゃあ一応1個」

「了解。」

「あっ私もお願い。ダージリンでね。砂糖はなしでいいわよ。」

「雨宮先生もですか。了解しました。」

紅茶を淹れる時は(だいぶ常識のことだけだが)沸騰した熱湯を使う。沸騰してすぐのお湯を茶葉が入ったティーポットに入れ、3分蒸らす。そうすればしっかりと濃い紅茶ができる。

「お待たせ。はいどうぞ。」

「ありがとう。 あっつ。」

「気をつけて。3分蒸らしたと言ってもまだ熱いよ。」

「あっでも舌が慣れてきた。 あったかい〜」

「よかった。図書室は広い分暖房つけてても寒いからね。」

「よし、がんばるぞ!」

5時半になってやっと日が沈んできた。暖かい春の便りが来たようだ。



「何が暖かい春の便りだ。」

今日はテスト当日。何故か猛吹雪がやってきた。

「寒い寒い寒い寒い寒い寒い……」

「きゃあ。」

君は風に吹かれて、しかも昨日は暖かくて雪が溶け、朝に凍ったので足を取られて転んでしまった。

「大丈夫?」

「うん。ありがとう。 あ〜でも痛い。 血は出てないけど…本当に氷の上のふわふわ雪って危ないよね。」

「氷の上に砂があっても雪で隠れちゃうからね。」

「は〜あ。 ほんと嫌になっちゃう。」

そうしてなんとか学校にたどり着いた。ちなみに話していなかったが。偶然?電車が一緒になった日以来、僕たちは一生に登校している。最近僕は君に慣れてきた?ようだ。

 最後の定期テスト、しかももう3月の中旬に差し掛かっているっていうのに教室はなんと10度。暖房もカンカン音を鳴らしながらフル回転している。でも手がかじかんでしまう。

「よし、頑張るぞ!」



「やっと終わった!」

4日間の激戦、天候も、テストも終えた僕らはいつもの図書室で紅茶を飲んでいた。

「どうかな。 でも化学だいぶ解けたよ。中和滴定と量的関係のところとかしっかり出来た。でも数学が難しかったな〜 悔しい。次は数学をもっと頑張ろうっと。」

「流石に最後の問題は意地悪だったよな〜三角関数の2次方程式と確率なんて…あれで20点分でしょ。」

「ほんとわけわかんない。三角関数の確率なんてどう考えたって日常生活でつかわないでしょ。」

「とりあえず二人ともお疲れ様。はいどうぞ。テスト期間中アシスタントは暇だったから、クッキーでも焼いてきました!」

「わあ美味しそう。 ありがとうございます。」

「雨宮さんお菓子作れたんですね。」

「当たり前じゃない。どれだけ薬品の分量の調節に慣れていると思っているの。多分この学校で2番目くらいに料理は得意よ。流石に家庭科の佐藤先生にはかなわないけど。」

「サックサク! おいし〜」

「ふふっ。ありがとう。私、図書局員の子にはたまにお菓子作ってあげてるんだ。図書局に入っているとラッキーだからね。」

今度こそ間違いなく、春の暖かい風が吹い…



…ていない。外はまだ寒かった。

帰り道。

「寒い〜もう本当にやだ。寒いの嫌い。手がかじかんで痛いし… 黎の手あったかそう。」

「うん? ああ手袋はいているからね。貸すか?」

恨めしそうな顔をしていたので遠慮気味に聞いてみると

「えっいいの?ありがとう。は〜あったかい。ぬくもりを感じる。」

「そんなに変わる?」

「ぜんぜん違うよ。ありがとうね。」(ボソッ(テヲツナイデホシカッタノニ…))

「何か言った?」

「ん〜ん なんでもないよ。」

「そっか」

あと1週間で修了式、1年生で居られる時間ももう少しだ。

明日は暖かくなるといいな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る