最終話 豪運の持ち主

思いの丈をぶつけただけぶつけた後、スッキリしたのかは分からないが、

命日の予定であるこの日はよく眠ることができた。

翌朝、私はまた何気ない学校生活を送り、

家に帰って部屋でまた死神さんと談笑をしながら一日を終えたのだった。

こうして、私は3度目の死を回避することに成功し、

私の命日騒動は無事に幕を閉じた。

以下は、命日(予定)の夜の会話である。


「…言っておくけど、これは違反行為だからね。私もタダじゃ済まないのよ。」

「あーっ…罰を受けちゃうって感じですよね。ほんとすみません…ってあれ、

今までの2回は大丈夫だったんですか?」


「アナタは気にしなくていいわよ。私の好きにやっただけだから。

罰はまあ…死んで詫びるとかでは無いわね。そもそも私、生きていないもの。

罰の内容としては、冥界にあるコースをマラソンするのよ。

バカ広い冥界を10周もね。それはそれはもう想像もできないくらいには広いわよ。それとセットで反省文のおまけも付いてくるわ。」

「うっわ嫌だなあ。それを2回もやってたんですか?」


「そうよ。そして2回目の罰はそれに加えて、アナタに関するプログラム管理の権威の消失ペナルティね。要はもういじれなくなっちゃったのよ、アナタのプログラム。だから今回はアナタに直接、話を聴きに来たってワケ。」


「なるほど…要するに、私とお話したかったんですね。

めちゃくちゃ私のこと、好きじゃないですか」

「あ~もうっ!!!なんでそんな自分に都合の良い解釈になるのよ!?

冗談言うなら死んでもらうわよ!!!」


「私はそれでもよろしいですよ。死んだ後でも貴方に会えるので。」

「冗談に決まっているでしょ!!!バカ!!!」


「あはは」


不思議だ。この子となら、いつまでも笑っていられる。この子となら、遠慮しないでいられる。こんな気持ちは初めてだ。

生きていてこんなにも心地が良いと思ったことは、今までになかったな。

「ところで、死神さんのお名前は何というんでしょう?」

「んー。そうね。名前はあるにはあるけど、この世界の言語のつくりとは

根本的に違うからなあ…ぶっちゃけ表現のしようがないわね。」

「そっかあ…じゃあタナりんはどうです?」

「タ、タナ…?まあいいわよ。好きに呼びなさいな。」

「やったー!ありがとうタナりん!!」


「っ…。再度言うけど、私に触れてはダメだからね?アナタ、うっかりやりそうで

ちょっと怖いのよ。私に触れたら、本当に早く死ぬことになるんだからね?

私はアナタのプログラムにはもう干渉できなくなったから、

もう前みたいなズルはできないの。

だから、アナタには自力で長生きして欲しいのよ。」


「そうですね。そこは気をつけます。自力で長生きか…

以前の私では、できなかっただろうなあ。

でも今は、側に貴方がついている。

タナりんがいたら、私はどこまででもいける気がします。」


「っ…わかればいいのよ。分かればね。」

「じゃあ私が死ぬまでは…共にプラトニックラブな関係でいましょうね。」

「直接言葉で言うな!!!もお~恥ずかしいわ!!!!!」

「えへへ」



やっぱり私は、豪運だったみたいだ。

だってこんなに素敵な死神さんとの出会いがあったのだから。



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