第2話 変わらない日々
その日の学校生活はというと、
それはまあ相も変わらずの何気ない日常を過ごしたのだった。
あー…そっか、私は明日死ぬのか。じゃあ学校に行く意味もそんなに無かったな…
まあいっか。最期くらいは…ところで、私は何で死ぬんだろう?
次、死神さんに会ったら聞いてみるか…あっ。
あー…まただ。まったく人前でイチャつくなよ。羨ましいだろ。
…などと思いながら教室の隅で仲睦まじそうにしているカップルを横目に見た私は、お手洗いへと向かった。
うん、本当に何も起きていない。退屈と言ってもいいほどに変わらない日常だ。
しかし、こういった何気ない平和な日々が大切である…のだろうか?
正直、今の私には自信を持ってイエスと言えない問いだろう。
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いつものように何事もなく授業を終えた私は、放課後の帰りにまた死神さんと
出会ったので、お話をすることにした。私の命日の前日であるその日は、
もうすっかり夕暮れ時を迎えていた。
「貴方を抱きしめてもいいですか?
どうせ明日死ぬのなら、犯罪になっても大丈夫でしょ。」
「はああああああああ!?出会い頭に何言ってんだ!!!
ダメだわコイツ、人として必要であるハズの倫理観が欠如しているわ!
いえ、たった今欠如したのかしら?ええい、そんなことはどっちでもいいわ!」
まさか死神に倫理観の心配をされるとは思わなかったな。
「とにかく私に触れてしまってはダメよ。私は死神なのよ!
触れても法には触れないけど、寿命を吸い取られてしまうのよ!?
今、ここで触れてしまったら、アナタはその瞬間、死ぬかもしれない。
ちゃんと明日、予定通りに死んでもらわないとこっちも困るのよ!
あと、シンプルに気持ち悪い!!!」
「いやあ、学校に着いてしばらく冷静になって考えてみたら、
想像以上に見た目が好みで…顔も可愛らしいですし…
つい、抱きしめたくなってきて。」
「アナタ、教育の場でそんなハレンチなことを考えていたのね…
まったく、人間の脳内を覗いてみたい気分だわ。」
思春期の学生達はそんなもんなんですよ…と思ったけどそれを言ってしまったら
何か人としての尊厳を破壊してしまうなあと思ってので、黙っておいた。
「そういえば死神さんって見た目お若いですけど、何年位生きているんですか?」
「あー…どうかしらねー?アナタの世界で言うところだと、多分二千年くらいは
生きてるんじゃない?」
「ええっ!!そんなに!?」
「ああ…私はアナタ達人間とは別の次元にいる存在だからね。私の世界では時間のようなしっかりした概念は無いから、きちんと数えているわけではないけど…
まあ、アナタの想像を遥かに凌ぐほど生きているっていえば伝わるかしらね。」
「なるほど…では私のことは産まれた時から見てくださっているんですか?」
「そういうことになるわね。」
「そうなんですか…ではママと呼んでいいですか?」
「死神をそんな親しみのある名前で呼ばないでもらえるかしら!?
あと、私をママと呼ぶのは流石にアナタを産んだ本当のママに対して失礼というものではなくて!?」
「確かにそうですね…じゃあ、第二のママと呼ばせてください。」
「イヤイヤ、優先順位の話じゃないわよ!?ダメだコイツ、早くなんとかしないと…やっぱり今死んでもらってもいいかしら?」
「…それで困るのはお互い様のはずでは?」
「そうだったわね…怒りで我を忘れていたわ。ありがとう。教えてくれて。」
「いえいえ、例には及ばないですよ。私は間違いを犯そうとした貴方を止めた。
それだけのことをしたまでですから。」
「アナタ、自分がさっきまで何をヤろうとしていたか、忘れていなくて?
…はあ。なんかアナタといると調子が狂ってくるわね…」
「いやあ、それなりに長くは生きてるんだろうなと思ってましたが、
まさかそんなに人生の大大大先輩だったとは…」
「人じゃないけどね。生きてもいないけどね。」
「良いですね。萌えるじゃないですか!!ロリババア!!!」
「随分と酷い物言いね!?残念ながら否定するけど、ロリババアは違うわよ!!
さっきも言ったけど、私のいる世界に時間の概念は無いの!
確かに私はアナタの世界の時間で例えると二千年くらい生きているけどね。
精神は見た目通りのまんまなのよ!心は若いのよ!!」
「なんですかその都合の良い設定!?最高じゃないですか!!性癖が歪んでしまいます!!!」
「私はアナタの性癖など知ったこっちゃないけどね!!!それは好きにしたら!?」
「…ところで、私が明日死ぬ理由は、何なのでしょうか?」
「んー。それが私にも分からないのよねえ。
普通だったら、予め伝えられるハズなんだけど…」
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