私、明日死にます
げの
第1話 私、明日死にます
「アナタ…明日で死んでもらうことになったから、よろしくね♪」
「はっ…はああああああああ!?」
若干16歳の高校生である私は、見知らぬ少女から死を宣告されてしまった。
突然の出来事である。もっとなんかこう、前兆というか、前振りというものは
無いのだろうか。しかも、通学中の朝の出来事である。
「初めまして、私は死を司る神…要するに死神よ。
アナタが明日死ぬ様子を今から観察しに来たわ。
以後、お見知りおきを♪」
「はあ…よろしくお願いします。」
私は困惑しながら、その子に挨拶を返した。
この子が死神だって…?
うーむ。何を言っているのか理解が追い付いてないぞ。
だってほら、見た目普通の女の子じゃないか。にわかには信じ難い…
いやまあ、ミディアムヘアの金髪で、緑色の目をしていて、死神の鎌のような物を
持っていて、魔法使いみたいなコスプレの服装で気になる点は多いよ?
死神って言われたらいかにもな恰好はしているよ?
でも最初に見た第一印象としては、中学生くらいだろうか…
明らかに私より年下の、何の変哲もない幼気な少女だ。
「観察って…何をするんですか?」
「簡単よ。人が死ぬ様をただ見届けるだけ。んで、それを記録して上に報告するの。これが死神の仕事なのよ。」
「分かるような分からないような…にしても、唐突すぎません?
そもそも貴方はなぜ、私の目の前に現れたんですか?
観察するだけなら、わざわざ宣告する意味が無いですよね。」
「んー。それについては今までの状況を説明する必要があるわね。」
「今までの状況…ですか?」
「アナタね。本当ならもう2回死んでいるハズなのよ。」
「…へ? に、2回!?本当なら死んでいる!?」
「そう、2回。アナタは決められたハズのレールをへし折っているの。」
「は、はあ。」
「本来ねえ、生物の死っていうのは元より定められた運命で決まっているのよ。
普通の人だったらそこでハイ、さようならってなるワケ。
んでも、たまーにいるのよねえ。
逃れられないハズの死を回避してしまう豪運の持ち主が。」
「それが私であると…?」
「まあそれを2度も回避しちゃうっていうのは、ごく稀の超レアパターンなんだけどねえ。まったく、前世でどれほどの徳を積んできたのか…仏の顔も三度までって言うでしょ?だから今回、私が直々に告げに来たってワケ。要するにアナタに対しての
勝利宣言、もとい宣戦布告ね。」
宣戦布告も違うような気がするけど…つまり2度までは上手いこと死を回避していた私が、今度こそ確実に死ぬのだと、この死神は確信しているってことか。
それでわざわざ私に告げに来て…そもそも今まで死を回避してきたという実感というか、思い当たる節が私には無いのだけれど。
「うーん。仏って本当にいるんですかね…」
「知らないわよ。閻魔様なら知ってるんじゃないの?」
あっ閻魔様はいるんだ…いやそうじゃなくて。
「貴方、死神でしょ?仏ではないじゃないですか。」
「アナタ、ネタにマジレスするタイプなのね…その真面目そうな見た目に反して意外だわ。いや、真面目だからこそなのかしら?」
「なんですか、その『マジレス』って…インターネットの用語ですか?」
「うん。ネット用語よ。あら、知らないの?現代人は知っていて当然だと思っていたわ。私、こう見えて博識なのよ。この世界の知識は常にアップデートしているわ。」
最近の死神はインターネットにも精通しているのか…私もアニメとかはよく観る
けど、そういった用語には疎いんだよなあ…ってそんなことはどうでもよくて。
「『仏の顔は~』で思ったんですけど…ほら、二度あることは三度あるって言いますし…私、また死なないんじゃないですかね。」
「でもでも、三度目の正直とも言うじゃない?今度こそ死ぬと思うのよね、
アナタ。」
うっ…確かにそういう言葉もあるな。というか冷静に考えると相反することわざがあるのってちょっと面白いな…人の価値観の違いの表れでもあるのかも。知らないけど。
ここで腕時計を確認したら、予鈴の鐘が鳴る5分前の時間になっていた。
…おおっともうこんな時間か。そろそろ学校に行かないと。
「っと、そろそろ時間なので、お先に失礼しますね。」
「…ちょっと!学校があるのは分かるけど、もう少し私と話しなさいよっ!!!」
「いやいやあ、もうすぐ授業が始まってしまうので、私はこれで!
死神さんの話も大体分かりましたよ。また後でお話ししましょう!では!」
そう言って、私は死神と談笑(?)して学校へと向かったのだった。
「…行っちゃった。まったくもう、
明日死ぬっていうのに学校に行くなんて、律儀な子ねえ。」
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