11話〜のぶゆき vs 新聞部①〜

とある日の昼休み…


「おい、あれって本当なのかよ。」


「あれ、まじだったら普通に終わってるよな。」


「でも、あいつに限ってそんなことあるのかよ。」


なぜか学校の廊下を歩いていると、すれ違う生徒のほぼ全員から陰口のような声が聞こえてきた。こんなのいじめだろう。私も朝、廊下を歩いているときにそれに気づいた。


『一年の「のぶゆき」と転校生の「小野寺さん」、交際か』


と廊下の掲示板に貼られていた校内新聞のとある記事。その騒動もう解決したのかと思っていたが、未だに噂をするものが絶えないのは仕方のないことである。


「大丈夫だよ、のぶゆきくん。僕たちはただの噂だってわかってるからね。」


クラスに戻ると、ケンゴロウと愉快な仲間たちがそう私に言ってきた。


「いや、別に気にしてないよ。」


「ううん、僕も君の気持ちはわかるよ。先週の校内新聞の記事には僕が和式のトイレでしか用を足せないことが書かれてたんだッ。」


え?


「あ。へーー。それは悔しかったねー。」


ケンゴロウは和式のトイレでしか用を足せないという記事を出され、悔しがっていたが、私には彼を慰める言葉の一つも出てこやしなかった。


「僕もそうだ。」


次は栗谷の校内新聞の記事の話だ。


「僕の記事は今週の校内新聞に掲載されていたんだ…君の特大記事とは違い、端っこに小さく書かれていたけど悔しいんだッ、僕のプライベートを記事にされて…」


今週の校内新聞を手に持っていた栗谷が指を刺した記事には、『一年の「栗谷」、数学の授業中にう◯こ、漏らす』とどうでもいいような記事が記されていた。


「まあ、あれだ。記事が小さくてよかったじゃんかよ。」


と慰めになっているのかもわからないような言葉を言った。


「心配かけてるみたいだけど、私も、小野寺も大丈夫だ。無視しとけばいいんだ、こんな記事は。」


と大人っぽく対応した私に対して、ケンゴロウと愉快な仲間たちは感心したような顔でこっちを見てきた。


スキャンダル記事などはアイドルプロダクションを経営している私からすると付き物である。アイドルの熱愛疑惑だったりもよくあるし、私にも何度か週刊誌の記者がついてきたこともあった。なので、本能でどこに記者がいるのかなどがわかってしまう。


現にこの教室の中にも一人の記者が私たち、いや主に私のことを監視している。視線や人の見方、手元を見てみると大体、記者かどうかが判断できてしまう。教室の中央ら辺にある私の席から右に2席、後ろに3席に座っている彼は私が教室に入ってきた瞬間から私のことを見ていた、それも私の周りにいたケンゴロウと愉快な仲間たちを一度も見ずに、教室の反対側にいた生徒を時々見るような感じで人を見ていた。


あとは、ずっとノートを取っている仕草をしているのは、学校だから不自然に感じないかもしれないが、その席に座っている彼の期末テストの順位を見る限り、予習や復習をしないような順位の低い生徒であることがわかっている。


ここ2週間ほどは私に徹底的にマークがついているらしい。まあ、そう言っても私のように隙もないような完璧人間のスキャンダルなど見つかるわけがない。


それから1週間後…


1週間で更新される校内新聞の新しい記事が出た。それを読んだ私は、この上ない恐怖感を感じた。特大記事は、またも私についてだった。だが、今回は小野寺との関係性についてではなかった。記事の見出しはこうだ。


『一年の「のぶゆき」、実際は30代の大人か』

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