8話〜相沢先生と女子テニス部の合宿1日目〜①
学生にとって夏休みとは1ヶ月のパラダイス。友達と遊ぶのもあり。彼氏彼女とたくさんデートもあり。家族と海外旅行も最高にありだ。だが、夏休みを贅沢に使う方法はこれに限る。
それは…
相沢先生と2泊3日のテニス部合宿の手伝いだ。
反論は認めない。いや、反論してくる奴なんてそもそもいない。夏休みが1ヶ月と言えば、もちろん学校も1ヶ月間ない。つまり、相沢先生と1ヶ月も会えないことだ。だから、2泊3日のテニス部合宿の手伝いは西赤崎高校の生徒にとっては、最高級のパラダイス。
で、そのパラダイスヘの切符を掴んだ選ばれし、4人を紹介しよう。
まず、ゴリゴリの剛力くん。ほぼゴリラだ。
次に、ヒョロヒョロのもやしくんだ。ほぼ細谷くんだ。⚠︎逆です。
そして、頭脳系のチョーくん。韓国人留学生で、分析をチョーしちゃうインテル系。でも見た目はメガネ以外普通の高校生。
最後はお待ちかねーッ!!ケ・ン・ゴ・ロ・ウ!!!!
ボコッボコッ!
おーっと!ケンゴロウくんが後ろから何者かに殴られました!!立つことができませんケンゴロウ選手!ケンゴロウ選手、KOです!そして、最後の最後でパラダイスへの切符を手にしたのは彼を鈍器で殴った…
この物語の主人公だあああッ!!!
◇ ◇ ◇
時間を少し遡る…
コミュニケーションアプリのLIMEにて、ケンゴロウと主人公の(仮)のぶゆきは話していた。
「おい、のぶゆきくん。」
「なんだ、ボケンゴロウ。」
「明日から俺、相沢先生の女子テニス部と2泊3日の旅行だぜ。」
「へー、よかったな。で集合場所は学校か?」
「え?なんでそんなこと気にするの?」
「とにかく言えよ、ボケ。」
「ま、まあ。そうだけど。」
「おう、ケンゴロウ。明日は背後を気をつけるんだな。」
「心配してくれてありがとう!明日は気をつけて行ってくるよ!」
◇ ◇ ◇
そういうことで、ケンゴロウは背後を襲われ、代わりに(仮)のぶゆきくんがパラダイスにお供することになりました。
小さなバスに女子テニス部と手伝い4人組が乗ると、バスは早速出発した。なぜか相沢先生が私たちを男女ペアで隣同士に座らせた。もっとみんな仲良くして欲しいという相沢先生の願いから私たちはそれを承諾した。私の隣は一ノ瀬だったので、喋りやすかったが、他の奴らはまだ入学してから一度も女子生徒と喋れてないような気弱な男子生徒諸君だったので、聞こえてくる会話はそれはそれはひどいものだった。筋肉だけが自慢の剛力くんので隣に座ったのは2年の清水先輩だった。
「清水先輩、俺の筋肉触ってくださいよ。ほら、触ってくれよ〜。」
剛力くんのほぼセクハラ発言には、流石の清水先輩も叫ばざるを得なかった。
もやしの細谷くんは、1年の竹内さんの隣に座っていた。細谷くんは特に何も喋らなかったが、優しい竹内さんは嫌な顔ひとつせずに、緊張でぶるぶるに震え、汗が出過ぎていた細谷くんに笑顔でこう言った。
「細谷くん、すごい汗だね。このバス、クーラー弱いよね。」
それを見ていた男子諸君は、細谷くんを羨ましがった。
チョーくんに関しては、最初は隣に座っていた学園唯一の3年生である堀北さんから、なぜかめちゃくちゃに嫌われ、チョーくんが何を話しても彼女はゴミを見るような目で、チョーくんを睨みつけ、イヤホンをしながら寝た。
残っていた一ノ瀬が私の隣に座っていた。それにしても、綺麗な女装だと思った。華奢で理想的な女子高校生っぽいショートカットの一ノ瀬は、美少女と呼ぶほかないような人だ。
「一ノ瀬、付いてくることになって悪いな。みんながお前のハーレムを邪魔したくて仕方がなかったらしい。」
「あー、そんなこと気にしてないわよ。」
「器が大きいな、お前。」
「別に付いてきてもいいのよ、正直関係ないわ。そんなことよりめちゃくちゃ楽しみなのよ。」
「ん?何が楽しみなんだ?」
「え?もちろん、女の子達と一緒に風呂に入ることだよ。うひひ」
「え…」
こいつめっちゃ変態なのかよ。だが、これは大事件だ。相沢先生の無防備な姿を誰にもみられるわけにはいかないんだ。仕方ない。男どもの力を借りるか。
今回の合宿で泊まる場所は相沢荘、相沢会長の所有している宿だ。私も以前、宿泊したことがあるが、至って普通の宿だ。元々、相沢会長の別荘だったらしいが、あまりにも掃除と管理が面倒くさかったらしく、宿に改装したという。
「じゃあ、男子達〜。荷物下ろして、部屋まで持っていって。」
キツく、3年生の堀北さんが私たちに見向きもせずにボソッと言った。面倒くさいと思いながら、宿の中に入ると、ロビーにはなぜか秘書の七海がいた。テニスラケットや、ジャージなどがいっぱいに入った荷物を抱えていた私たちに向かって、「今日から三日間、宿でのお世話をしていただきます七海です。よろしくお願いします。」と言った。
荷物を全て女子部屋まで持っていくと、私たちは自分の荷物を男子部屋に持っていった。なんという差別なのかはわからないが、女子部屋は2人1部屋だが、私たち男子の部屋は4人全員で2人1部屋に泊まらなければいけなかった。最悪な部屋だと男子諸君が嘆いていると、部屋のチャイムが鳴った。ドアを開けてみると、そこにはブチギレ寸前の七海がいた。怒りたい七海の理由もわかる。私が大事な会議をすっぽかして、ここまできたことが原因だ。しかし、これは無論、私のせいではない。相沢先生との2泊3日なんて滅多にないことだ。それに行かなければ、相沢先生推しである私の箔が落ちてしまう。
「は〜。もういいですよ。」
なぜか七海は許してくれた。
「じゃあ、罰として始末書80枚ですよ。」
全然、許してくれてなかった。
◇ ◇ ◇
テニス部合宿は思ったよりもキツく、合宿ではめちゃくちゃにこき使われた私たち。特に、チョーくんは堀北さんにボールを何度も腹に当てられていた。
「俺は、大丈夫でござる…」
とかっこつけながら私たちに言っていたが、めちゃくちゃにダサかったのでボコボコにした。
練習が終わり、女子達が部屋に一旦戻ると、私たちも汗を垂らしながら、男子部屋に戻った。するとボロボロなチョーくんがなぜか笑いながら、こちらを見てくる。こいつも変態なんだなと思いながら彼を見ていると、チョーくんが急に声を大きくしてスピーチをしているかのように言った。
「おい、お前ら。今回の合宿は合宿と書いてノゾキと読む。今日は女子風呂を覗くでござるよオォ!」
やっぱり変態だ。そういえば、似ているようなことをバスの中で一ノ瀬に言われた気がすると思い、彼らにその旨を打ち明けた。
「実は、男の一ノ瀬がバスの中で女子と風呂でハーレムを楽しみにしているって言ってたけど、それもノゾキだよな。」
チョーくんが反応する。
「ぐっ!なんと変態な」
お前もだろ。
「ちょっと待ってくれ!それってつまり!」
何かを思いついたようにチョーくんが男子諸君を円陣にさせ、ノゾキ作戦を説明した。作戦を聞き、それはとんでもない盛り上がりを見せた男子諸君は一気に士気を上げ、今日の夜を楽しみに待っていた。
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