3話〜恐怖のお見合いパーティー〜
6月のある日…
忘れられているかもしれないが、私は一応会社の社長もしている。アイドルをプロデュースしている会社の社長だ。一代目は相沢会長、そう相沢先生の祖父にあたる方である。
私は平日は学校に行っているため、夕方から私は仕事を始める。17時に会社に向かい、24時半まで仕事をする。今は2つのプロダクション経営をしており、10組のアイドルグループをプロデュースしている。相沢会長は元アイドルの奥さんを持つため、相沢先生が絶世の美女になるのも頷ける。
そんな中、私が年齢詐称をし、日中は高校生として活動していると知っている人が一人だけいる。
秘書の
24歳の若者秘書だが、能力は本物だ。結構可愛いとは思うが、俺には相沢先生がいる。七海とはもうかれこれ6年くらいの付き合いだから、信頼はお互いにしている、と思われる。だが、よく軽蔑はされる。
「社長、まじできもいです。近くにいたくないです。」
とよく罵られる。スケジュール管理をしている彼女には高校生になることを全て話さなければいけなかった。
そのことは彼女以外誰も知らないので、私は学校以外では七海に相沢先生の魅力について胸の内をぶちまけてしまう。
そうすると必ず、
「そんなことより社長、来週もまたお見合いパーティー入れといたので」
と勝手にお見合いをさせられる。34歳なのはわかっているが、相沢先生のことを知ってしまったら、お見合いなんて無意味だと伝えているのだが、そうすると必ず、
「社長、きもいっす、早くお見合い行くか、会社辞めてください」と言われる。
で、今私はそのお見合いパーティーに参加している最中なのである。
まあ顔もかっこいいし、社長やってて総資産もえぐいことなってるし、久しぶりにモテまくるかと思いながらも、誰とも話せず会場の角で隠れてる所です。
「えー盛り上がってきたところで大勢で王様ゲームしましょー!」
と司会の人がアナウンスした。何も盛り上がってない私の心とは別に会場はすごく盛り上がり、すでに仲良しグループみたいなのができていた。
王様ゲームが始まったらしいので、私も一応参加させられた。
「やったー!私王様ー!」
女性の声が会場に響く。私の引いたくじの番号は23番。会場にいるのは私を含めて30人。
多分呼ばれない。っていうか呼ばないでくれ。呼ぶなぁと願うことしかできなかった。
王様の女性が言う。
「じゃあー3番の人が、んー」
まずはセーフ。
「今日は2月3日だからー23番の人に頭を撫でてもらうー」
今日は2月3日だから出席番号23番の人ー、みたいなノリで言うなよ。それは学校でしか言うなよ。
まあいい。3番は誰だ。誰なんだ。せめて美人であってくれ。ていうか女であってくれ。
「えー俺3番ー」とまさかのケンゴロウが言った。
は?なんでケンゴロウがいるんだよ。っていうかケンゴロウなんかいつもと雰囲気違くないか。スーツ着てて、髪もセットしてるし。
いやそれどころではない。このままでは誰も興味がないボーイズラブが始まってしまう。どうすればいいんだ。逃げよう、お腹の調子が悪いって言ってトイレに駆け込もう。
「23番みーっけ」
ケンゴロウがホラーゲームばりに私の真後ろに立ち、私が持っていたくじに指を刺した。
まずい。ここでケンゴロウに顔を見られたら、西赤崎高校ののぶゆきだと気づいてしまう。どうしたものか。脳を人生で一番働かせた瞬間かもしれない。
いややるしかない、ここで誰にもバレずにケンゴロウを仕留めるしかない。後ろに立っているケンゴロウのみぞおちにエルボーを決めるしかない。
肘を思いっきりケンゴロウに振った。まさにクリーンヒット。倒れたケンゴロウはうずくまり、その間に隙ができた。顔は見られずに逃げ出せば、問題なくこの惨事を抜け出せるはずだ。私は勢いよく走り出し、会場を出ようとした。
そうすると倒れていたケンゴロウがかろうじて、いやがっしりと私の足を掴み、
「行かせないよあはは」
と再びホラーゲーム。正直言ってキモすぎる。
詰みだ。もう終わった。ケンゴロウにバレる。あと俺はケンゴロウの頭を撫でなければいけないという王様の命令を思い出し、恐怖と羞恥心のせいか、その場で動けなくなってしまった。
しかし、先ほどのエルボーが綺麗に決まっていたせいか私の足を掴んだケンゴロウの手の力は段々と弱まり、次第には私は手を振り解き、会場の外まで急いで走った。すぐに七海の運転する車に乗り、「早く出せ!」と死にそうな声で震えながら言った。
次に学校でケンゴロウに会ったら、次は顔面にエルボーをしようと決めた。
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