2話〜学内の女子4人〜

5月中旬ごろ…


もし、学校内のほとんどが男子で女子が4人しかいなければ、どんなに顔がよろしくない女子だってきっとモテるはずだろう。


 しかし、西赤崎高校では違う。相沢先生がいるからだ。


 もっとわかりやすく説明してあげようではないか。例えば、女神様がいて、その隣にゴキブリが4匹並べられたとする。あなたは誰を選ぶ?と言われたら人間はどうするだろう。


 正解は女神様を選ぶのではなく、女神様をただただ拝み、他のゴキブリに同情するのだ、「かわいそうだね」って。

 そこにはそもそも選択肢はなかったですよねと言わんばかりに正常な人間であれば反応してしまうだろう。


 しかし、1年生の栗谷くりたにが2年生唯一の女子である清水しみず先輩に告ったと言う恐ろしい事件が発覚した。しかもオッケーされたと栗谷が言うのだ。


 そんなわけないだろう、栗谷は天然アフロなのだから。天然アフロの人たちをバカにするつもりはないが、天然アフロを好きになる女子は国内には断じていないのだ。


 私とケンゴロウはリア充を見たくないので、天然アフロボケを拷問することにした。

 

「今すぐに別れないとアフロを縮毛矯正するぞ。」


とケンゴロウは残酷無慈悲ざんこくむじひにも言い放った。


「それでも俺は清水先輩を選ぶよ。」


と栗谷は覚悟を決めて言った。


「全校生徒に付き合ったこと言うぜ。」


ケンゴロウはそう言ったが、栗谷は揺るがなかった。もう栗谷を非リアにさせる方法はないのかと悟った。


「俺たち、女子には手出ししねえって暗黙のルールだったじゃんかよ。お前だけリア充にさせれねえよ。」


とケンゴロウは言い、情けなくも泣き始めてしまった。


 それでも栗谷の意思は揺るがなかった。こんなに真剣な目の栗谷は見たことがなかった。するとケンゴロウはボソッと口にした。


「相沢先生にこのこと言わなきゃな、」


 初めて栗谷の表情が歪んだ。当たり前だ。もしも相沢先生に清水先輩と付き合っていることがバレてしまったら、相沢先生に合わせる顔がない。いや、相沢至上主義の西赤崎高校では退学になってしまうかもしれない。てか退学してくれリア充は。


「俺やっぱ別れるよ。相沢先生の大切さを恥ずかしながら忘れてたよ。気づかせてくれてありがとうケンゴロウ、のぶゆきくん!」


 栗谷はやっと理解した。相沢至上主義の高校で女子と付き合うことの重罪を。

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