第10話ミケケとクロロ
ダボが亡くなってから何年かは猫のいない生活でした。
ただ猫がいないせいで、わが家の屋根裏でネズミの運動会が開催されるようになりました。
裏の荒れ地から入ってきたのでしょう。台所の天井に小さな穴があけられていて、みんなが寝静まると、そこから家の中へも降りてくるようでした。
穴はすぐに塞ぎましたけれど、それだけで居なくなるわけもありません。ネズミ取りを仕掛けたり、薬を仕掛けたり、色々試してみましたが解決しませんでした。
ちょうど、妹の仕事場の同僚の家で猫が生まれて、もらい手を探しているとのことで、三毛縞模様のメス、キジトラのオスの
当時、マンガの『動物のお医者さん』が人気だった頃で、赤ちょび、黒ちょびと名づけられたのですが、誰もそう呼ぶ家族はいなくて、みんな勝手に好きなように呼んでいました(笑)
最終的には、三毛縞がミケケ、キジがクロロにおちつきました。
同じ姉弟でもだいぶ性格がちがいました。
ミケケはやや神経質で頭が良い子、クロロはおっとりのんびりでした。
例えば、カーテンに上って遊ぶ時など、クロロは普通に駆け上がり、ゆっくり降りてくるだけなのですが、ミケケは上った先で横に下がっている風鈴を見つけて、手を伸ばして触ってみる。
同じ行動をしても、違いがあるのが面白かったです。
子猫が二匹は、かなり賑やかでした。
バタバタ駆け回っていて、静かになったなと思ってようすを見ると、ビリビリに破いた障子の桟にツメを引っかけて、二匹並んでブラブラとぶら下がっていた時は、とても叱れませんでした。
残念なことにミケケはあまり長生きできませんでした。交通事故です。
当時私はパン教室の講師をしていて、時々研修のため上京していました。
その日も和菓子の研修で、祝い菓子、練り切りの鯛を作ったので、家族に見せようと楽しみに帰宅したのですが、そこで見たのは、今回もまた紙袋に入ったミケケでした。
▼在りし日のミケケの写真です(X)
https://x.com/mirurufara/status/1760560877919777167?s=20
この当時、わが家の前の道は、工事の資材を運ぶダンプ頻繁に行き交うようになっていたので、道路に死んだ猫が放置されているのはよく見る光景でした。
そして、クロロも例外ではありませんでした。ただ彼は生命力が強かった。
母が庭に出ていて、あっという間のことだったと言います。
クロロが道を横切ろうとした時、ダンプが来て、タイヤの間をくぐり抜けたようです。ただし、車の底にある出っ張りのようなところに体を打ち付けたらしく、お向かいの空地へ駆け込んだまま出てこなくなりました。
夫と私が呼び出されて、なんとかつかまえました。
急いで動物病院へ。
この頃には車で20分ほどのところに獣医さんがいたのは幸いでした。
内臓破裂の重傷ですぐに手術。その後も1ヶ月近く入院していました。
それでも命が繋がったのは不幸中の幸いでした。
田舎とは言え、当時はもう猫を外で自由にさせておくのは限界になっていました。
以来、クロロは日中は大きめのケージでの幽閉生活。夜に家の雨戸をすべて閉めてから部屋に出すという生活になりました。
最初は閉じ込められるのが嫌で、ずっと鳴いていました。可愛相でしたが、もう痛い思いをさせたくはありません。
10日もするとあきらめて馴れましたけれど、外に出たくていつも隙をうかがっていました。
何度かは逃げ出して、夜に家族総出で家の周りを探しまわったこともあります。
▼在りし日のクロロの写真です(X)
https://x.com/mirurufara/status/1760509543103242334?s=20
クロロはネズミ取りが上手でした。
普通は親猫に狩りを教わらない猫はネズミを捕らないと聞きますが、彼のおかげで、屋根裏の運動会はなくなりました。
たまに、朝起きてスリッパを履こうとすると、ネズミのお裾分けが入っていて、叫び声をあげることもありましたけれど(笑)
おっとりな割には腕の良いハンターだったようです。
交通事故でつらい目にあったクロロでしたが、20歳まで長生きしてくれました。
最期は老衰で大往生でした。
次第にものが食べられなくなり弱って行くのを見るのは辛かったですが、それでも、寝室の彼の毛布の上で、眠るように息を引き取れたのは、歴代の猫たちよりは幸せな終わり方だったかと思います。
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