第8話ティティ
最初の就職先は、所属していた文芸同人誌主宰が経営していた小さな出版社でした。
実家からは通えないため、実家と会社の中間地点あたりに借家をして通勤していました。
そこで飼っていたのが、ホワイトペルシャのティティでした。
たまたまのぞいた小さなペットショップで、生後1年以上過ぎた、いわゆる「売れ残り」だった子でした。
『抱いてみますか』と店員さんに言われて、渡してもらった彼女が、見た目よりも随分と軽くて、懐にいれたらもう離せなくなっていました。
もしかすると、店員さんの思惑もあったのかもしれません(笑)
衝動買いでした。いえ、運命だっと思いたい。
その時お財布に入っていたお金で引き取れるくらいだったのも巡り合わせだと思います。
彼女は穏やかな性格で、社会人になったばかりの私が、仕事や通勤で疲れてぐったりしていると、気遣って寄り添ってくれました。
日中私が居ない時は、すっとお留守番をさせていたので、少し可哀想でしたが、帰宅すると玄関前で出迎えてくれるのも嬉しいことでした。
でも独り暮らしの中で、猫を、それも長毛種を飼うのはなかなか大変でした。
毛が抜けるのでお掃除もマメに必要ですし、毎日ブラッシングもしなくてはなりません。
忙しくなるとなかなか世話がしきれずに、二年後には実家へ預けることになりました。
その当時、実家にはジロがいました。
彼とは仲良くまではならなかったようですが、幸いうまく住み分けて馴染んでくれたようでした。
それから三~四年して、私が仕事を辞めて実家へもどり、結婚した頃も彼女は健在でした。
当時のわが家は七人家族で、夕食時にティティは夫の横の丸椅子に乗って、ツマミ狙いで晩酌につきあうのが習慣でした。
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